姫姉様と幼馴染01


「どうしてケント兄ちゃんは谷でもマスクを着けてるの?」


そんな声が聞こえてきて、思わず足を止めてしまった。

私の視線の先には腐海から戻ってきたケントと、それを取り囲む数人の子ども達の姿。

その内の一人が不思議そうに首を傾げている。


「ひっきりなしに谷と腐海を往復するからな…一々取り外すのが面倒なだけさ。」

「そうなの?じゃあ外してみせて!」

「また今度な。」


見たい見たい、と強請る子ども達を宥めすかしたケントがこちらへ向かって来る。


(…どうしよう…)


ケントを出迎えるつもりで来たのに、今は逃げ出したくてたまらなくなった。


足が、動かない。


「姫様?」

「……ケント…」


その瘴気マスクの下にあるのは昔、蟲に襲われた私を庇って負った傷。

それもケントの制止を振り切って、腐海へ一人散策に出た私を、


「……ごめんなさい…」

「は?」


困惑するケント。

言葉を続けようとしたけど、それ以上口を開けば泣きそうで、私は何も言わずにただ俯いた。


「姫様?」ともう一度呼び掛けるケントの声にも応えない。


「……姫様は本当、俺を困らせるのが好きですね。」


そしてマスク越しに、少しくぐもった笑い声が聞こえた。




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(また貴方の笑顔が見たい、なんて)
(私には言う資格などないでしょうけど)


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。