楽器職人見習いと同級生03


―…なんか最近、天沢と仲良すぎじゃね?










「つか何やってんだよ…!」


バンッと机を叩く音につられてそっちを見れば、何やら憤る野球部員が一人。

だが、特に教室内の誰も気に留めていないようなので、俺も無視して元の作業に戻った。


「はい次、あー…」

「…ん。」


可愛いラッピングからクッキーを一つ取り出し、隣の天沢の口元へ運ぶ。

天沢は本を読みながらも俺の合図に合わせて口を開いてくれるので、割と楽な作業だ。


そして天沢が食べ終わるのを見計らい、次のクッキーを、


「おい、ケント!聞いてんのか!?」

「え、俺?」

「お前しかいねぇだろ!?何やってんだ!?」

「何って…これ、隣のクラスの女子から『天沢くんにあげて』って頼まれたから」

「『あげる』の意味が違うだろ!?」

「え?」

「はい、どーん。」

「うおっ!!?」


違うのか?と聞き返すより先に視界からフェードアウトした野球部。

入れ違いにフェードインしたのは帰宅部と剣道部だった。


「別にいいんじゃね?当人が気にしていないなら。まぁ、その隣のクラスの女子には悪いけど。」

「それよりケント…ここはやっぱり『私と本、どっちが大事なの?』って怒るべきだ。」

「何だ、それ。」

「……ケント、って答えれば満足か?」


不意に天沢が本に視線を落としたまま、ぼそりと一言。

ぶっきらぼうに、でも心なしかその頬は赤い。


それを聞いた友人らがわざとらしく驚いたように口元を両手で覆う。


「まぁ、聞きました?奥さん。」

「えぇ、マダム。あの名字すら呼ぶことの出来なかった坊やが随分と成長したものね。」

「…どうでもいいけど、キャラ設定は統一した方がよくね?」


というか結局、この作業はこのままでいいのか悪いのか。

手にしたクッキーを見つめ、俺はそれを自分の口の中へと放り込んだ。





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(それで?『お前が大事』と言われたケントくんの答えは?)
(ん?あー…俺は本を読んでいる天沢が好きだけど。)
(っ…!)
(はいはい、ごちそうさま。)


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嘘つき、ロンリー。