踏鞴場の長と青年01
ケントの放った弾は狙いを大きく外れた。
その様子を傍らで見ていたゴンザが、ここぞとばかりに笑い飛ばす。
「貸してみろ!俺が手本というものを見せてやる!」
「はぁ…」
引ったくるように奪われた石火矢をぼんやりと見送るケントに未練はなさそうだ。
それに気付かぬゴンザは何やら大仰に説明しながら構える。
ふと私の視線に気付いたのか、ケントがこちらを向き、目が合った。
「どうも昔から、的を狙うというものが苦手でして。」
すみません。
そう言って頭を下げたケントに、「いや、構わない」と小さく笑いを漏らした。
まだ少年とでも呼べそうな年頃の、この男がたたら場に来てもう随分と経つ。
『東から来た』と、それ以上の素性を話すことはなかったが、年若く整った顔立ちのケントに女達は色めき立ち、早々に受け入れた。
女達が認めれば、後の男達は黙するしかない。
異を唱えたのはゴンザくらいのものだった。
『薄気味悪い野郎だ!』
私が何かとケントを傍に置いたのも、側近として面白くなかったのだろう。
事あるごとに罵詈雑言を投げ付けるゴンザに、だがケントは何も言い返しはしなかった。
年長者を立てる、そんな気風がケントの故郷にはあったのかもしれない。
「未だ嫁を取らぬのも、ゴンザに気兼ねしてか?」
今もどこからか向けられる、娘達の熱い視線に気付いていない訳でもないだろうに。
そしてどこからかゴンザに向け、石が投げられた。
「それとも、ここに腰を落ち着けるつもりはないのか?」
そっと吐き出される息を感じる。
「届かないものは苦手なのです……逃げたしたくなるほどに。でも、」
その瞬間、遮ったのはゴンザの怒鳴り声だった。
ふと我に返ったようなケントと再び目が合い、そして気まずそうに逸らされる。
「すみません。」
それは何に対しての謝罪か、何を言おうとしていたのか。
それ以上、ケントが語ることはなかった。
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吐き出そうとしたのは、諦めかけていた思い。
(そういえばあれは、)
(どこかエボシ御前に似た娘だったような)
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アンケートより。
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嘘つき、ロンリー。