東の青年と石火矢衆02


一歩進むごとに強まる視線。

二歩進むごとに大きくなる囁き声。


三歩目を踏み出したところで、隠す気のない敵意に満ちたゴンザ殿にとうとう捕まった。


「貴様、見慣れぬ顔だな。」


そしていくら石火矢衆の人間だと訴えても、なかなか信じてもらうことは出来なかった。








「…そろそろ返してもらえませんかね。」


アカシシの世話をするアシタカ殿の手伝いをしながら、その背中にぽつりと呟いてみた。

すると何のことだか分からない様子で、アシタカ殿が不思議そうに振り返る。


「頭巾ですよ、頭巾。あれがねぇと落ち着かなくてしょうがねぇ。」


アシタカ殿に奪われて数日。

ゴンザ殿に疑われたのはまだいい。

だが、同じ石火矢衆からも気付かれなかったのはさすがに泣けてくる。


さぁ、出せ!とばかりに手を差し出せば、アシタカ殿は曖昧に微笑むだけで全く渡す様子がなかった。


「一体、何が気に食わねぇんです?旦那だって似たような恰好してたじゃねぇですか。」

「あれは私のくにの旅装束だ。」

「俺のあれだって、火薬を吸い込んでむせないようにとか…色々あんですよ。」

「しかし、私の側にいる間は石火矢も使わないだろう?」

「そりゃまぁ、そうですけど…」


ふとアカシシが一鳴きし、アシタカ殿は止めていた手を再び動かしてその背を撫でつけた。

あのままでは丸め込まれるところだったのでちょうど良かったが、しかしまだ決着は着いていない。


そっと息を吐き出した。


「…とにかく、俺なんぞに誰かの面影を重ねんのは止めてくだせぇ。」


恐らくアシタカ殿が俺の頭巾にこだわるのはそこだろう。

確か、郷里に残してきた弟だか何だかに俺が似ているとか何とか


「そんなことはない。」


急に振り向いたアシタカ殿はやけに真剣な表情だ。

いや、よく考えてみればアシタカ殿はいつだって真面目そのものだったか。


そして、



「私はそなたを、一人の男として想っているよ。」



いつだって突拍子もないことを言うお人だった。

また一つ、溜息を吐く。





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何でもいいんで、とっとと頭巾を返してくだせぇ。


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アンケートより。
リクエストありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。