本と楽器と恋の物語

終章


―…ようやくここに帰ってきた、帰ってきてくれた。


町並みを一望出来るその高台で、かつて少年少女だった二人が見つめあう。

そこに、言葉は必要なかった。













最後の句読点を書き終えたところで、ふとそれに気が付く。


「…あー…タイトル……」


後回し後回しにして、ずっと空欄だった最初の1ページ。

どうすっかなぁ…と頭を掻きながらぼやいていると、背後から名前を呼ばれ、反射的に振り向いた。


それと同時に、唇に感触。


「んっ…お帰り。」

「ただいま。」

「早かったなぁ…サボりか?見習いくん。」

「親方が気を遣ってくれたんだよ。」


恋人がわざわざ日本から遊びに来ていると伝えたら、「今日くらいは休め」と言われた。

なんて確信犯もいいところ。


そう笑っていると、二度目の、不意を突くような口づけ。


「…お前も、すっかりこの国の空気に馴染んだよな。」

「そうかな?」

「そうだよ。前にも増してキザっぽくなりやがって。」

「何だよ、それ?」


無自覚な恋人に苦情をぶつけたところで、やはり特に気にした様子はない。

それどころか背後から抱きすくめられ、肩越しに手元を覗き込まれる。


「もしかして終わったのか?」

「いや、あともう少し。」

「そっか。じゃあ向こうで待ってるよ。」


そして、三度目。

最早口を開くことは諦め、溜め息混じりに部屋を出て行くその後ろ姿を見送った。


しばらくして聴こえてきたのは、いつかの音色。


(『カントリーロード』…いや、あれは『コンクリートロード』か。)


それにまた少し笑って、「あ、」と机に向き直る。


ようやく最後の一行を書き足して、そして、そっとノートを閉じたのだった。





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(耳を、すませば)


End.

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嘘つき、ロンリー。