外伝奇集
その後
失ったものと、得たもの。
「さすがはジコ坊。」
復旧の進捗状況をまとめた書簡に目を通すと、そう言って満足げに笑う女傑。
そして「引き続き、そなたに任せよう」と返されたそれを受け取り、簡単に言ってくれるものだと内心苦笑を漏らした。
(しかし、戦などよりこうも骨が折れるとは…)
それとも今まで他を顧みず壊し続けたつけだろうか。
なんて思いつつ、書簡を懐に戻して下がろうとした瞬間、ふとエボシと目が合った。
「どうだ、ケント。少しはここに馴染んだか?」
「…その名で呼ばれるのは未だに慣れませんがね。」
一瞬、反応が遅れてしまったのもそのせいだ。
それをごまかすように肩を竦めれば、エボシはおかしげに目を細める。
「私はもう見慣れてしまったよ。」
何が、と問うより先についと外れる視線。
それは自分よりやや右後方の…
確認するまでもなく、それに思い当たった俺は小さく溜息を吐いた。
「…俺は、慣れたくはなかったんだが。」
エボシはますます愉しげに笑った。
「良き右腕を手に入れたではないか。」
「止せ。図に乗る。」
「いらぬなら、ぜひともゴンザと換えて欲しいものだ。」
「エボシ様…!」
途端に割り込んできた声に、あぁそういえば奴もこの場にいたなと思い出す。
当人のいる前で言い放つとは、さすがエボシ御前。
そしてそのエボシの後ろより身を乗り出して、何やら切実に訴えるゴンザをぼんやり眺めていると、また別の声が割り込んだ。
「エボシ殿、私はケント殿の右腕などではないぞ。」
振り向きたくはない。
が、振り向かねばきっと奴は余計なことを言う。
それは絶対に防がねば、
「私はケント殿の伴侶だ。」
「黙れ、小僧。」
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そして得たくなかったもの?
(何を馬鹿なことを、そんな真顔で)
(ケント殿、そう照れることは…)
(まだ言うか、貴様。)
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嘘つき、ロンリー。