外伝奇集
その後?
物心がつく前に流行り病で母を亡くした。
父の顔など元より知らぬ。
兄弟らしい兄弟も、いなかったように思う。
そんな天涯孤独の身の上を憐れむ暇もなく、ただひたすら生きることに専念した幼少期。
必要なのは銭と、己のこの身体のみ。
そして騙し騙され、擦った揉んだを繰り返し、気付けばいつの間にか師匠連の末席に収まって…
「…そんな顔をしなさんな。」
まるで今にも泣き出しそうなその表情に、俺は思わず笑ってしまった。
「聞きたいと申したのはそちらではないか。」
「…辛いことを話させてしまった…」
「情けはいらん。今のご時世、よくある話だ。」
とは言ったものの、アシタカの表情が和らぐことはなく。
ならば話はこの辺で切り上げ、いざ作業に戻ろうと筆を手に取った瞬間。
とんっと背中に何かがぶつかり、腹に腕が回された。
「おい、墨が」
「…今は私が、そなたの家族だ…」
「アシタカ?」
ぼそりと耳元で囁かれた言葉に眉を顰めるよりも先に後ろへと引き倒され、気付けばアシタカと天井を見上げていた。
「…家族が、こんなことをするのか?」
そう揶揄するように鼻で笑うも、やはりアシタカの表情は真剣そのもの。
だが両の手首を縫い留められ、足の間には割り込まれたアシタカの身体。
身動き一つ許さないこの体勢から連想するのは、恐らく
「そなたには、言葉だけでは足りぬだろう?」
--------------
(より深い繋がりを)
(甘く淡く、その身に刻め)
---------------
リクエストありがとうございました!
*前次#
戻る
嘘つき、ロンリー。