太古の神々の物語

めでたしめでたし


神も仏もありゃしない









「人間を許すことは出来ないが、アシタカは好きだ。」


これからも良き友でいよう。

そう言い残し、兄弟らを伴って山へと帰って行った山犬の娘。

その後ろ姿を見送り、そっと溜息をこぼした。


「…………いいのか?」

「?何がだ?」

「今行けば、まだ間に合うぞ。」


暗に「追い掛けたらどうだ?」と言ったつもりが、同じように隣でそれを眺めていたアシタカは不思議そうに首を傾げるだけだった。


「そなたがここにいるのに、どこに行けと言うのだ?」

「…お前……いや、もういい…」


一体自分の何がその琴線に触れたのか、妙に懐かれたものだ。

そう呆れつつ、アシタカの言葉を受けて思考を切り替える。


俺は、これからどこへ行けばいいのだろう。


此度の失態も、いずれは師匠連に伝わる。

これまで築き上げてきた地位が惜しくないと言えば嘘になるが、恐らく戻ったところで挽回の機会は与えられまい。


それどころか、


「私はそなたの味方だ。」


まるで考えを読み取られたかのような間合いに、一瞬動揺してしまった。


「、まだそんなことを」


ごまかすようにそう吐き捨てたものの、思ったより声色が弱々しい。

目を逸らし、顔を背け、だがそれを許さぬようにアシタカが俺の両の手を取る。




「共に生きよう。」




そして甘く優しい言の葉に誘われるまま、アシタカと目が合った。


「ア、」








「アシタカ様ー…ケント殿ー…」


不意に遠くから二人を呼ぶ声が聞こえ、我に返る。


(あ、ぶない、あぶない…)


弱みに付け込まれるとは正にこのこと、いつもの自分の常套手段ではないか。


いかんいかん、と首を左右に振り、声の主に心の中で感謝を告げた。

恐らくタタラ場からの、使いの者だろう。


ちらりと隣を盗み見れば、アシタカもまたそちらに気を取られているようだ。


「『ケント』…?」

「ん?あぁ、俺の名だ。『ジコ坊』は師匠から受け継いだ号だからな。」


いや、業と言うべきか。


『自己坊』とは言い得て妙だと面白がって普段はそちらを使うのだが、そういえば前に一度だけエボシ御前に名乗ったことがあったか。


(まさか覚えていたとは…)


感慨深く目を細めていると、突然今度は両肩を掴まれた。


「な、」

「どうしてもっと早く教えてくれなかったのだ…!」

「……は?」


先程同様、いやそれ以上に真剣な面持ちのアシタカ。

一瞬何を言われたのか分からず、だが次の瞬間俺は笑ってしまった。




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ただそこにあるのは、いのち。


(いやはや、馬鹿には勝てん。)




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嘘つき、ロンリー。