これからの話

旅立ちの話


「どうした?アシタカ。」


先を行くケントが不意に足を止め、こちらを振り向いた。

その問いの意味を量りかね、「何がだ」と問い返せば小さく苦笑されてしまう。


「自覚がないのか?ひどく浮かない顔をしているぞ。」


反射的に自分の頬に手を当てたものの、触れただけでは分かるはずがなかった。

だが、ケントが言うのならばその通りなのだろう。


「まぁ、今回は事情が事情だ。旅を楽しめとまでは言わないが、もう少し肩の力を抜いたらどうだ?」


お前は真面目すぎる。

そう言って笑うケントに、思わず溜息をこぼした。


そもそもこれは同行を有しない旅だったはず。

それをまるで物見遊山にでも出掛けるような気軽さで「俺も行く」と名乗り出たケントは、事の重大さを解っているのだろうか。


「…なぁ、アシタカ。ならばこう考えたらどうだ?」


するとケントは止めていた足をこちらへ向けた。


「?ケント…?」

「話は出来ても見つめ合えず、」

「!」

「隣に居ても手を握ることも出来なかった…」


一歩一歩近付く度、一つ一つゆっくりと吐き出される言葉。

それはあまり大きな声ではなく、むしろ淡々としていたが、私の胸を小さく締め付けた。


「ケント…」

「…あのままくにに居ても結ばれぬ身の上だ。ならばどんな茨の道だろうと、一緒に居られる方がいいだろ?」


そしていつの間にかすぐ傍まで来ていたケントは私の右腕に触れ、


「タタリ神でも神は神だ。ついでに誓っておくか?」


悪戯っぽく笑った。





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(死が二人を分かつまで、)


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嘘つき、ロンリー。