これからの話
道中の話
燻る薪に砂を掛けて完全に消し去っていると、視界の端でアシタカがヤックルを宥めすかしているのが見えた。
「行けそうか?」
「あぁ…少し無理をさせてしまったな。」
くにを出て早数日。
何か明確な目標がある訳ではなく、ただひたすら西へと進む旅だ。
今しばしの辛抱だ、などと気軽に声を掛けることも出来ない。
「そろそろ次の村に着きそうなんだがなぁ…」
そうぼやきながら腰を上げた瞬間、胸元に顔を擦り寄せてきたのは俺の相棒。
ヤックルとは違い、気性の激しい奴だ。
本当は村に置いてくるつもりだったが、出立の日の朝も俺の言うことを聞かず、ひどく手を焼いたのを思い出す。
『ケントさまも行かれるのですか…?』
ふと、その毛並みを撫でていた手を止めた。
『あにさまを、アシタカさまをどうか…どうか…』
「ケント。」
「…あぁ、すまんアシタカ。」
呼ばれた名前に我に返る。
不思議そうにこちらを見つめるアシタカ。
そしてまだ撫で足りないとばかりに、不満げな相棒と目が合って苦笑した。
「さぁ、行こう。」
まだ日も明け切らぬ早朝、掟に背いて見送りに来た一人の乙女。
その心情を思うと今でも胸が痛む。
(なんて浅ましい男だろう…)
優越を感じるなんて。
--------------
(恋がその眼を曇らせた)
(そしてアカシシに嫉妬する、傍らの男にも気付かない)
--------------
アンケートより。
リクエストありがとうございました!
*前次#
戻る
嘘つき、ロンリー。