大泥棒 対 名探偵

衛兵


「先生!先生!」


何度呼び掛けてみても、前を行く青年は足を止める様子がない。


聞こえていないのだろうか。

そう思って、一際大きな声を出した。


「ケント先生!」


一瞬その肩がビクッと飛び跳ね、振り向いた顔はひどく驚いたようだった。

悪いことをしたと少し恐縮しながらも足早に追いつき、ようやくその隣に並び立つ。


「すみません。次元先生をお探ししているのですが、ご一緒では?」

「先生…は、えっと…今、外に…」

「あぁ!常日頃から空気の重さと大気の流れを体感しておく!それも射撃には大切なことでしたね!」

「……えぇ、まぁ…」


確か、そんな話を前の講義で言っていたはず。

次元先生ほどの人でも常に初心を忘れずにいるとは、なんて素晴らしい!


「次元…先生に何かご用でしょうか?よろしければ自分が代わりに承っておきますが。」

「あ、いえ!個人的に少々お話をお聞かせ願えたらとそう思いまして!」


頭が下がる思いで一人感動に耽っていると、ケント先生の声にふと我に返った。


不在ならば仕方ない。

また改めて出直して来ます、と挨拶してその場を立ち去ろうと


「あの、すみません。」


する前に、今度はこちらが呼び止められた。


だが、向こうから声を掛けておきながらケント先生はなかなか本題を切り出そうとしない。

それどころか、どこか恥じらうように目をさ迷わせる姿に思わずドキッとしてしまう。


「あの、ケント先生…?」

「その…先生、は止めてもらえませんか?」

「はい?」

「自分はその、次元…先生の助手のようなもので…先生なんて呼ばれるほど大層なものでは……」


あ、なんだ。そういう話か。

なんて少しがっかりしながらも、「とんでもない!」と声を上げた。


「現に昨日はケント先生が講義をされていたではないですか!」

「いや、あれはあのひ…との気紛れのせいで……それに講義といっても、ただ狙撃ポイントについて簡単に説明しただけ」

「いえいえ!大変勉強になりました!」


そういくら褒めちぎったところで、なおもケント先生は謙遜を止めない。

なんといじらしい方だろう。


何だか次元先生とは別の意味で、個人的に話がしたくなってきた。


いや、決して何か下心がある訳では、



「よう、取り込み中か?」





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(まるで、でっかい釘を刺されたようだったと)
(後に衛兵は語る)

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嘘つき、ロンリー。