紅い飛行艇乗りの物語

第二話


見ずとも分かる、受話器の向こう側。










空賊連合がアメリカ人の助っ人を連れ、豪華客船の襲撃に成功した話は知っていた。

そしてその後、その助っ人が『豚をやった』と言い触らしているのも。


「アイツがそう簡単にやられる訳ねぇだろ?百歩譲ってもエンジン不調とかが原因だろうな。」


だから落ち着けって。

そう宥めてみたものの、あまり効果はなかった。


『落ち着いていられる訳ないじゃない。マルコが死んだかもしれないのよ?』


噛み付くように返ってきた声に冷静さなど微塵も感じられない。


三人目の夫を亡くして、過敏になっているのだろう。

クールでセクシーな大人の女性と評判のマダム・ジーナの姿は、生憎そこにはなかった。


『ねぇ、ジュニア。空軍の方で何か情報は…』

「残念ながら今のところ何もねぇな。」

『……そう…』

「もし何かあったら俺もフェラーリンも真っ先にお前に連絡入れる。だから変な気を起こさず大人しく待ってろよ、ジーナ。」

『……えぇ…』


何とかジーナに無理矢理約束を取り付け、俺は通話を切った。

だが正直あまり信用していない。


(あのジーナだしな…)


置いたばかりの受話器を再び手に取り、掛け慣れた番号へと繋ぐ。

頭の中は先程の彼女の声で一杯だ。



『落ち着いていられる訳ないじゃない。』



「…ったく。ジーナに心配させんなっつったろうが、あの豚野郎。」


なかなか通じないコールに思わず舌打ちした。






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きっと、そこにいるのは自分自身。

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嘘つき、ロンリー。