神々の集う湯屋の物語

番外編:お風呂の時間。


※本編より少し前の話。








久々に『油屋』に帰ってきたかと思えば、血濡れの泥まみれ。

一体どこで何をして来たのかなんて、武神の性質を考えれば問うだけ無駄な話だろう。


いや、むしろ「触らぬ神に祟りなし」と言ったところか。


「汚れちまったから湯屋に来た。それのどこが間違ってるって?」


周囲が戦々恐々としている最中、当の本人だけはそう悪びれた様子もなく言い放ち、ただけらけらと笑う。


そんなケントが番頭に案内され、一番奥にある湯釜へと姿を消してもう随分と経った。


「…そなたは勝手が過ぎる。」


その様子を見に訪れて早々、ハクは思わずそう苦言を漏らす。


「俺ァ客だぜ?持て成しを受けるのは当然だろうがよ。」

「客は客でも、食客であろう。」


赤く濁った湯船にゆったりと身を沈め、相も変わらぬ笑みを浮かべるケント。

そしてハクに向け、無造作に手を伸ばした。


その意図に気付いたハクは溜息一つ吐いて、また一歩とケントへ近寄る。


「しっかし、ハク様直々に給仕の真似事なんざ贅沢なもんだなァ?」


差し出された盆の上には徳利が数本に猪口が一つ。

それは来る途中に、女衆の一人が運んでいたのをハクが譲り受けてきたものだ。


やけに浮かれた様子だった女衆が少し落胆していたように思う。

ハクはますます眉を顰めた。


「鴨にわざわざ葱を持たせる訳にもいかぬ。」


ひどく苦々しい声色。

だがケントは特に気にも留めず、数本の内の一本を摘んで顔の前で数回横に振って見せた。


「おろちが酒を運ぶのも、結局は同じことだろうがよ。」


そしてまた愉快そうに笑いながら、猪口も使わずに酒を呷るのだった。




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(それを喰らうは素盞嗚の、)


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リクエストより。
リクエストありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。