慰労&感謝祭

カエサル、お前もか。


恐らくこれは忠誠心を試されているのだろう。

でなければ、どうせ何も出来ない臆病者と侮られているのか。


(…信頼されてる、と素直に思えないのが悲しいところだな…)


本日は我等が主であるカリオストロ伯爵の花嫁、クラリス様の花嫁衣裳仮縫いの日。

俺はその警護を命じられた訳だが、何故か控え室にいるのはクラリス様と俺の二人だけだ。


ふと、嫌な笑みを浮かべた伯爵の顔が脳裏を過ぎる。


(一体何を期待しているのやら…)


仕置きの名目が欲しいのか。

いや、もし何かあれば、伯爵以前にジョドー様が手を下すはず。


それも物理的に首が飛ぶだけでは済まず、死体丸ごと闇の中だ。


「…もし。」


粗相どころか呼吸一つにさえ気を使う、と溜息を飲み込んだところで小さな声が掛かった。

まさか向こうから声が掛かると思わなかった俺は、一瞬反応が遅れてしまった。


「時々、ヘリに乗られていませんか…?」

「は…?」


間違っていたらごめんなさい、と続けられた言葉に慌てて「いえ、」と返した。


確かに表向きの役職は整備士だが、所詮はカゲ、そんなもの形ばかりだ。

それを彼女に見られていたとは、覚えられていた、とは。


「あれは、オートジャイロというんですよ。」


高い高い塔の上に閉じ込められ、空を眺める他何もすることがなかったのだろう。

そこで会話は途切れたものの、俺はその青い瞳から目を逸らすことが出来なかった。


(彼女の瞳が青いのは、じっと空だけを見つめていたせいだ…)


そんな柄にもないことを考えたのは、それがあまりにも綺麗だったから。


だから、


「……申し訳ありませんが、少し席を外します。」

「え?」

「何かありましたら部屋を出て右へ、お進み下さい。他の者がそちらに控えておりますので。」


くれぐれも左へは行かれませんように。


そう念押しして俺は、クラリス様の返事も待たずに部屋を出た。


その瞳を、明るい陽射しの下で見てみたくなった。






カエサル、お前もか。

(裏切るつもりなどありませんでした)
(私も、自分の心に裏切られたのです)


2013.9.21

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嘘つき、ロンリー。