慰労&感謝祭

勿論、ついて行きます。


彼のライト兄弟はなぜ、空を目指したのか。



「空を飛びたいと思ったからだろう。」

さも当たり前のように、その人は答えた。
そこに理屈などないと言わんばかりに。

偉大なる兄弟も、この人のように強い志で、ただ純粋に空を目指したのだろうか。
そして、この人のように自分の夢を己の力で掴んだのだろうか。


ふかした煙草の煙が、スッと空へと延びて行く。

そう考えると自分の動機は、不純だよな…。


「飛行機の設計主務を一任することになった。」

「へぇ。流石、ウチの期待の星ですね。」


唐突に告げられた言葉も特に驚くことはなかった。

先輩がドイツに渡った頃から、覚悟はしていた。

先輩は、どんどん遠くへと飛んで行ってしまう。
自分の手の届かなくなるところまで。


はじめは、必死に追いつこうともがいてもみた。

しかし所詮、天才と凡人。
その距離は埋まるどころか、離れてくばかりだ。


もう一口煙草をふかせば、煙が風に揺れる。


「人員は好きにしていいと言われたからな。ケント、おまえを指名した。」

「………は?」


咥えた煙草を危うく落とすところっだった。

「なんで、俺なんですか。二郎さんの方が適任でしょ。」

「あいつはあいつで、やることがあるんだよ。」


確かに、二郎さんほどの設計士だと他の担当を任されてもおかしくない。


「それでなくても、俺はお前を指名するつもりだったけどな。」


平然と告げる先輩の横顔は憎らしいほど格好良い。
本当、ずるい人だ。


「……また、こき使うつもりですか。」


俺の必死の憎まれ口も、先輩には大した効果はなくて。

「覚悟しろ。」と、楽しそうに先輩は笑った。



勿論、ついて行きます。


そこに、貴方がいるなら。


2013.9.20 written by 楓音ツキ

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嘘つき、ロンリー。