イチャコラ祭

成代主


『馬鹿か、お前。』


そう苦々しく吐き捨てられた言葉は、もう何度目になるだろう。


眉間に寄せられた皺、冷ややかな眼差しに時折こぼれ落ちる舌打ち。


明らかに好意的ではないそれらに、それでも彼の人の目に己が映っていると思うだけで胸がひどく騒いでしまうのだ。





「へ、へぇ…」

「そ、そうですかい…」


話しながら頬をほんのり赤く染め、ぎゅっと胸元を掴むアシタカに対し、顔を引き攣らせる数人の牛飼い達。

ただ一人、甲六だけが暢気に「つまり、気の強いところがいいってことですかい?」と首を傾げた。


「いや、そうではなく…何と言えばいいのか…上手く言葉に出来ないのがもどかしいな。」

「はぁ…アシタカ様でもそういうことがあるんですねぇ…」

「特にケント殿のこととなるとな…どうしても想いが先走ってしまうのだ。そう言えば、つい先日も」


また再び滔々と語り始めたアシタカを甲六に任せ、牛飼い達はこそこそと顔を寄せ合う。


「お、おい、分かったか?今の話。」
 

「いやぁ…俺にはちょっと……お前は?」

「さ、さぁ…?」


そもそもこの話、一体誰が始めたのか。


『アシタカ様はケントのどこが好きなんで?』


それはただの暇潰しで、ちょっとした好奇心だった。

このやたら真面目な青年を少しからかってやろうと、そう思っただけだった。


だが、いざ聞いてみると、どう反応していいのかよく分からない、斜め上を行く惚気話に困惑するばかり。


「普通、惚れた相手に睨まれたら落ち込むもんじゃあねぇのか?」

「だよなぁ…しかも相手はあのケントだぜ?のらりくらりと薄ら笑い張り付けて…睨むとか、あまり想像できねぇなぁ…」

「おぉ。あの笑みの方がたまぁに妙に艶っぽくて…あ、いや、別にそういう意味じゃ」

「仕事もせずに、何やら面白そうな話をしておるなぁ?」


突然会話に割り込んできた声に、誰もが思わず息を飲み込んだ。


「さて、拙僧も混ぜてもらおうか。」





暖まりたかったというのは理由になりませんか

「馬鹿か、お前ら。」

(そう吐き捨てたケントの目は心底凍てついていて、)
(それを嬉しそうに見ていたのはやはりアシタカ様だけだった)

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嘘つき、ロンリー。