天知と記憶喪失01



その日、何故か校舎の屋上で目を覚ました俺は何故か光嶺三年になっていた。

三年生まで生き残ると自動的に「まともじゃない」と判定を受けてしまう、あの光嶺の三年だ。


確かに俺は光嶺に入学したが、それはつい先日のこと。

ついでに言うと、自分で言うのもなんだが三年まで生き残れるほどの実力はなく、ぶっちゃけ中退でも何でもいいから光嶺ブランドで箔を付けてやろうと考える程度の小物である。

そんな野郎が一体どこをどう間違えれば光嶺で三年生になれるのか。

いや、もしかしたらワンチャン、他の「まともじゃない三年」の腰巾着か何かでやり過ごし、生き延びてきた可能性もあるにはあるのかもしれないが。


どっちにしろ、一、二年の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていることに頭を抱えていると、不意に掛けられた声に反射的に顔を上げた。

そして、苦笑混じりにこちらを見下ろすその姿に思わず目を見開く。


「大丈夫かい?玄兎。」


二中の天知。

俺と同学年で同じく光嶺に入学した、俺とは違って有名な男だ。

勿論、これまでに関わったことは一度たりとてない。


「まだ頭痛むかい?まぁ、あれだけ派手な音を立ててたんだ、無理もないかねぇ…」


混乱で言葉の出てこない俺を適当に解釈し、一人納得したらしい天知が俺の隣に腰を下ろした。


言われてみれば頭が痛いような気がするし、触ってみれば後頭部に少しタンコブのようなものが出来ているような気もする。

転んで頭でも打ったのか、もしかしたら記憶がなくなっているのもこれが原因なのかもしれない。


「ほら、これで少し冷やしておきなよ。」


そう言って、差し出されたのは一本のペットボトルの水。

とても光嶺の人間とは思えない人の良さに衝撃を覚えた俺は、またそんな天知に親しげにされているというこの状況が全く理解出来なかった。


本当に俺の知らない二年間に一体何が起きたのか。

ここは正直に記憶がないことを天知に話し、助力を仰ぐべきなのか。


「玄兎?」


呼ばれた名前に我に帰り、ひとまず先に天知からの厚意であるその水をありがたく受け取ることにした。

だが、そう思って礼を言った瞬間、何故か天知は驚いたような顔をして固まってしまった。


「…本当に大丈夫かい?救急車、呼ぶかい?」


え。





さんねんせいになったら

(まさか…お前に礼を言われるなんてねぇ…)
(え。)

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嘘つき、ロンリー。