泥棒一味と何でも屋01
「助かりましたわ、ミスター。」
「いえいえ!困っているレディがいたら助けるのが紳士の務めですからね。しかし、最近の若者ときたら―…」
なんて尤もらしいことを口にしつつも、しっかりと傍らの美女の腰に腕を回している姿に、「これだから最近の紳士は」と内心吐き捨てた。
そして二人の後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認し、一拍置いて腕時計に視線を落とす。
予定より三分ほど早い。
耳元で、女が笑う。
(…ロビーに出て、エレベーター…ドアが開いた。他に客は、乗ってない。乗り込んで、バーのある階のボタンを押して、それから…)
うんざりするような甘い会話が続く中、その背後に微かに聴こえる雑音を丁寧に拾い上げ、状況を脳内で再構築していく。
このまま行けば、スケジュールはさらに繰り上がりそうだ。
同じことを考えたらしい女が、自然なやり取りの流れで「合言葉」を口にする。
それに対し、了承の意を返そうとした矢先。
(ぁ……?)
視界の端に入り込んだ姿に一瞬、足を止めてしまった。
が、すぐにまた歩き出す。
「……不二子、トラブル発生だ。悪いが俺はここで降りる。」
そして返事も待たずにインカムを外すと、手近にあった観葉植物の鉢植えへと投げ入れ、踵を返し、
「よぉ、玄兎ちゃん?」
ド派手な真っ赤なジャケットに行く手を阻まれ、思わず舌打ちする。
やはり先程見掛けた、ホテルのパーティー会場に場違いなサムライは見間違いではなかったらしい。
「いやぁ、こーんなところで会うなんて奇遇だねぇ?」
「……ルパン…」
「トラブル、ってのはまさか俺達のことじゃあねぇよな?」
背後から揶揄するようにそう声を掛けてきたのは恐らく次元だろう。
ポンと軽く叩かれた肩は掴まれたまま、振り向くことを良しとせず、まるで拳銃でも突き付けられている気分だ。
「……そっちも、『仕事中』じゃないのか。」
「まぁ、そんなところだ。」
「だったら俺なんかに構ってる暇は」
「お。ごっえもーん!こっち、こっち!」
ブンブンとオーバーに両手を振って、どこかに駆けていくルパンの後に続くように背中を押される。
「おら、お前も行くぞ。」
「なんで俺まで…」
「不二子の『用』は済んだんだろ?なら今度は俺達に付き合えよ。」
誰のせいだと思っているんだ、と口に出せばまた面倒なことになりそうで無理矢理飲み込んだ。
代わりに溜め息一つ、こぼれ落ちてしまった。
これだから最近の泥棒は。
(ちょっと!勝手に玄兎を持って行かないでくださる?私のパートナーよ!)
(なぁにが「パートナー」だよ?どうせ取り分91だろ。)
(人聞きの悪いこと言わないで!73よ!)
(まぁ、不二子にしちゃあ気前がいい方だよな…)
(…その前に、玄兎を物扱いしているところが聞き捨てならんが。)
(どうでもいいからもう帰らせてくれ…)
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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。