嵜島とチンピラ01
『何じゃあわりゃあ、付き合い悪いのォ…』
「ははっ、さーせん。」
『女でもはァ出来たんかァ?』
一瞬、思わず黙り込んでしまった。
それを肯定と受け取ったのか、電話の向こうで笑い声が上がる。
『別に誰もとりゃあせんけぇ、今度紹介せぇよ。』
「いやぁ、あははっ。」
女相手ならどんなに良かったことか。
訂正するのも面倒で、曖昧に笑って通話を終わらせた。
どうせ次に会う時には忘れてしまっている。
忘れていなかったら?まぁ、その時はその時だ。
そう高を括って、壁際に置かれたソファーへと視線を向けた。
『ねぇ、玄兎くん。』
数日前。
いつものように店の女達を送迎する車内で、内緒話のように持ち掛けられた頼み事。
『うち、今度お客さんと旅行行くけぇ…その間、ちょっと預かって欲しいものがあるんよ。』
てっきり猫か何かの話だと思い、その時は軽い気持ちで二つ返事を返した。
だがそれはまさかの人間で、残念ながら男で、
(しかも…)
「……なぁ、君。すっごい有名人じゃあないの。」
ソファーに横たわる男に、溜息と共にそう声を投げ掛ける。
返事はないが、寝ている訳でもないだろう。
元から口数の少ない相手だ、特に期待はしていない。
「別にはァええんじゃが…面倒だきゃあ持ち込まんでくれや。」
嵜島 昇喜郎。
最近ここらでよく耳にする名前で、その顔も何度か写真を見せられて知っていた。
ガキどもが血眼になって探しているらしいが、一体こいつは何をしたのやら。
ごたごたに巻き込まれては敵わない、とまた溜息。
「大人しうしときゃあ、ちゃあんと世話しちゃるけぇの。」
猫相手ならどんなに良かったことか。
やはり嵜島からの返事はなく、代わりに「ふん」と鼻で笑われたような気がした。
猛獣の檻
(互いにナイフを隠し持った、共同生活)
---------------
リクエストありがとうございました!
次#
戻る
嘘つき、ロンリー。