銀次郎とツレ01
卑威巣斗の玄兎、と言えばそこそこ有名な男だ。
『玄兎?って、あぁ…アレじゃろ?黒崎のツレの。』
『単車で二人乗りしよるのをよう見るのォ…ほれ。ついさっきもそこで、』
『おぉ、ほォじゃほォじゃ!連合の柳との勝負に後ろからハッパ掛けよったわい!』
そんな玄兎は今、十代目卑威巣斗総長・虎鮫銀次郎の前で一人、正座をさせられていた。
「ええかげんにしてみよぉかァ…」
低い低い、銀次郎の声。
般若のような顔と相まって、それはもう恐ろしいことになっていたが、玄兎はただ不満そうにそっぽを向くだけ。
実はあまり知られていないことだが、玄兎は元々猿藤らと同じ銀次郎のツレで、付き合いの長さは誰よりも長く、ぶっちゃけ銀次郎の顔にも声にも慣れていた。
「あんだけ黒崎の単車にゃあ乗るなぁて、ワシゃあ何べんも言うたじゃろぉがァ…」
「そがぁ言うても、銀ちゃんが仲間入れてくれんのがはァ、いかんのじゃあないの。ワシじゃって遊びたいんで。」
そして猿藤らとは違い、実は未だ卑威巣斗入りが認められていないというのもほとんど知られていない話だ。
つまり玄兎は、正式には卑威巣斗ではない。
「銀ちゃあん…もうその辺で許しちゃりぃよ。」
「ダメじゃ。」
「というか、そろそろ仲間入れたってええんじゃあないスか?」
「ダメじゃ。」
メンバー全員とはこうして面識があるし、集まりにもほとんど顔を出している。
既成事実ではあるが世間一般の認識でも、玄兎は立派な卑威巣斗の一員だ。
ただ銀次郎だけが、「玄兎は族には向いていない」の一点張りなだけで。
「…もう、えぇ。お前は今後、『お修』の出入りも禁止じゃい。」
「!?なん、じゃと…?」
疲れたように頭を抱えた銀次郎が下した最終審判に、玄兎は愕然とした表情を浮かべる。
「銀ちゃん…そりゃあ流石に、」
「銀次郎の鬼!悪魔!般若顔!」
見るに見かねた江田が取り成すより先に、罵詈雑言を浴びせる玄兎。
その瞬間、当事者を除くメンバー全員の心が一つになった。
(((あぁ、この流れは…)))
「ふんっ。好きなだけ言うとりゃあ」
「ぶっさいく!」
「んじゃとごるぁぁあっ!!!」
そして見事銀次郎の地雷を踏み抜いた玄兎に、全員頭を抱える。
ぶっちゃけいつものことだった。
過保護な兄貴分。
(というか、毎度玄兎を単車の後ろに乗せる黒崎も悪いんじゃあないか…?)
「のォ江田、『般若顔』っちゅーんは悪口になるんか?」
「…………」
そして黒崎は相変わらずマイペースだった。
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嘘つき、ロンリー。