真一郎と元子犬01


※原作軸過去。
※真一郎、高校時代。









生まれてこの方、十数年。

これまで自分から告白することはあっても、自分が告白を受けたのは初めてのことだった。


それも、かなり熱烈に。


『あの時は助けてくれて、本当にありがとうございました!お礼がしたいので、カノジョにしてください!!』


ただし、そこで問題点が二つ。

まず第一に、それは純粋な好意ではなく「お礼」が目的であること。

第二に、そう言ってこちらを見上げてきた玄兎が自分の弟、下手すれば妹よりも「幼い少年」だったことだ。


確かに自分は、悲しいことに異性よりも同性に慕われる質であると何となく自覚はしていたが、流石にこれはヒドい。


そして、たまたまその場に居合わせた弟や妹からのジト目が本当にツラかった。


『あー…気持ちは嬉しい、けど…というか、何でカノジョ?』

『?だって真一郎さんが「カノジョが欲しい」って言ってたから。』

『…………』


どこで聞いたのかは知らないが、「サカりすぎだろ、オレ…」と少し反省した。


『だめ、ですか…?』

『ぐっ…』


不安げに首を傾げる玄兎はまるで捨てられた子犬のようで、なけなしの良心が咎めた。

ついでに言うと、これまでフラレ続けて傷付いてきた心がもう少しで絆されそうで、本格的にヤバくなってきたと感じていた。


せめて玄兎の年齢がもう少し自分に近ければ、あるいは弟の万次郎より身長があれば。

と思ったことがつい無意識に口から出てしまっていたらしく、気付いた時には万次郎もエマもドン引きしていた。


『シンイチローあらため、今日からショタイチローな。』

『おい、止めろ。今のは違う。』

『玄兎くん、アブないから向こうに行こうね?』

『エマも、不審者扱いしないでくれ。』


冗談ではなく本気でその手を引いて離れようとするエマに、だが玄兎は動こうとはせず、ただ何故か万次郎をじっと見つめ―…


『じゃあ、一年ぐらい待っててください!』





…ということがあったのが、今から一週間ほど前のことだ。

あれから毎日のように顔を出す玄兎に、最初は「一年で身長抜かされてたまるか、チビ。毎日牛乳飲んだって無理に決まってる」と憤慨していた万次郎も、今や兄貴風を吹かせてそれに構うようになっていた。

今日も、道場に来ていた動物好きの幼馴染みと三人、庭先で楽しそうに追いかけっこをして遊んでいる。


その姿はまるでじゃれあう子犬のようで、ふといつかの光景が脳裏を過った。


『オマエ、可愛いなぁ…オマエが人間の女の子だったらなぁ…クソッ、彼女が欲しい…』


そして、もう一度改めて反省した。


「真一郎さん!」


オレに気付いた玄兎が嬉しそうに駆け寄ってくるのが見える。

時々エマから着せ替え人形にされることもあるらしいが、まぁ弟達との関係は概ね良好といえるだろう。

オレ自身も、カノジョやらショタやらは抜きにして、「もう一人『弟』が増えたと思えばいいか」とすっかり気楽に考えるようになっていた。


だが一年後、玄兎の宣言通りその身長が万次郎を越すことを、この時のオレはまだ知らなかった。




牛乳効果って凄い
(そういや玄兎は「お礼だ」って言ってたけど、いくら考えてみても心当たりがねぇんだよなぁ…)


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嘘つき、ロンリー。