三途と伍番隊01
※原作軸過去(東卍)。
※モブ先輩が出張っているので注意。
チームを強化するために兵隊を増やしたい。
と「友人のセンパイ」から、友人と共に勧誘を受けたのがおよそ一カ月前のこと。
それって抗争が近いってことなんじゃ…?と正直ビビっていたものの、俺の杞憂だったらしく、本当にただの増員が目的だったらしい。
時々あちらこちらで大なり小なり喧嘩が勃発しているという話は聞くが、今のところ突然そちらに駆り出される様子もなく、少しホッとしている。
人間関係などの環境も悪くはない。
俺を勧誘した「友人のセンパイ」も今ではもうすっかり俺の先輩となり、なかなかの強面の割に気遣い屋で、定期的に「チームには慣れたか?困ってることないか?」と俺に聞いてくれる。
それに、俺が所属する伍番隊の隊長、副隊長も良い人達で、今何かと話題の不良グループ『東京卍會』とは思えないほどアットホームな雰囲気だ。
「…アットホーム?」
と、いつものように近況報告という名の雑談を先輩としていると、俺の言葉に先輩がふと眉を顰めた。
だってほら、アレじゃないですか、隊長が父親で副隊長が母親みたいな?なんて俺が笑いながら続けると、ますます歪んだ先輩の顔は控えめに言っても怖かった。
「…隊長はまぁ分かっけど、三途さんは違うだろ。見た目がアレ、女っぽいからって話なら他のやつには絶対言うなよ?本人の耳に入ったら殺されんぞ、オマエ。」
「え、」
隊長の方は否定しないのか、と思ったが、それより気になったのは副隊長の話だ。
確かに先輩の言う通り、副隊長は女の子に間違われそうなほどの美人ではあるが。
「先輩、それは冗談キツイですよー。」
あんなに優しい副隊長が「殺す」なんて、そんな物騒なことをするはずがないでしょ、とまた笑って続ければ、さらに怖くなる先輩の顔。
今度は流石に俺も思わず逃げ腰になってしまった。
「せ、先輩?どうかしました?」
「一応確認しておくが、オマエの言う『副隊長』は三途さんのことだよな?肆番隊とかの話じゃねぇよな?」
「え?肆番隊?」
あそこの副隊長は確か同じ隊の隊長と双子で少し童顔な感じはしたが、女の子っぽいというのとは少し違う感じがする。
いや、そもそも先輩だってこれまでの流れの中で副隊長の名前をしっかり出していなかっただろうか?
一体どこでどう話が食い違ってしまったのか。
「俺が言ってるのは間違いなく、俺達伍番隊の副隊長、三途春千夜さんのことですよ。」
東卍に入ってからの俺は先輩のお世話になりっぱなしだが、それ以上にお世話になっているのが三途さんだ。
副隊長という立場上、新入りの面倒を見なくてはいけないのかもしれないが、それを抜きにしても元々世話好きの優しい性格をしているのだろう。
俺がアシを持っていないと知ると、チームで集まる際にはいつも三途さんが行きも帰りも送り迎えをしてくれるようになった。(その際「もっとしっかり掴まってろ」とよく言われるが、その細い腰にしがみつくのはまだ少し慣れない)
そればかりか「今日は家に帰っても誰もいないんですよね」と何気なく話せば、「夕飯作ってやるよ」から始まり、その後も風呂上がりの俺の髪を乾かしてくれたり、テレビ前でウトウトする俺を布団まで抱きかえて運んでくれたり、大抵俺が寝る少し前まで側にいてくれる。(風呂については「髪洗ってやる」と言われたが、流石にそこは遠慮した。三途さん自身、綺麗な髪をしているので俺のボサボサ頭が気になって仕方なかったのかもしれない)
最近では親不在の日には決まってうちに泊まっていくようになり、朝目が覚めると真っ先に俺の目に映るのは、とても優しい笑みを浮かべて、俺の頭を撫でながらこちらを見下ろす三途さんの姿だ。
三途さんは天使か、いやもしかしたら聖母かもしれない。
「一回、寝ぼけて『母さん』って呼んじゃったことはあるんですけどね。」
そこで俺は「小学生かよ」という先輩のツッコミを期待していた。
話している内に、自分でも少し三途さんに甘えすぎなんじゃないかと改めて思い始め、その照れ隠しのつもりだった。
だというのに先輩の顔は相変わらず怖いまま、そして恐る恐るといった雰囲気で何か口を開きかけ、
「玄兎。」
先輩よりも先に背後から声が掛かり、振り向いた俺は反射的に「副隊長!お疲れ様です!」と姿勢を正して頭を下げた。
「今日はもうこれで終わりだから帰るぞ。」
「あれ?でもこれから何か一仕事あるって先輩が」
「あ?」
「!?い、いや、それはこっちのことでオマエには関係ねぇから大丈夫だ!」
「そうなんですか?」
「…オレもオマエを送った後、少しやることがある。オレが帰ってくるまでちゃんとお留守番してんだぞ?」
「副隊長、俺もそこまでガキじゃないですって。」
そう言って笑えば、副隊長も微笑み返してくれた。
先輩もこういうところを少し見倣って欲しい、なんて思いながらそちらに視線を向ければ、今までにない先輩の顔に思わず小さく悲鳴を上げ、俺は副隊長の後ろに逃げ込んだのだった。
うちの子に何か?
(数日後、気付けば知らぬ間に東卍を脱退していた先輩)
(「一緒に頑張ろうな!」と俺に話していた友人に続き、これで二人目)
(視界の端で溜め息を吐く武藤隊長の姿が少し印象的だった)
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嘘つき、ロンリー。