ロバのゲーム
first
『なぁ、今ヒマ?めっちゃワリのいいバイトがあんだけど。』
明らかに犯罪臭い誘いだと、それを鼻で笑い、あしらってやったのはいつのことだったか。
その時は「自分ならもっと巧妙に、もっと効率的にやる」と思っていたが、逆の立場になった今、なかなか思い通りにならない現実につい歯噛みしてしまう。
金を稼ぐ計画はある、のに必要な人数が集まらない。
いや、実際には上手くいっている方だろう。
このまま時間を掛けていけば、きっといずれはそれなりの組織となって大金が手に入る。
ただ、その肝心の時間がなかった。
一日でも速く、一時間でも速く、一秒でも速く、金が要る。
(あの人の、ために。)
そんな時、ふと思い出した『名前』に藁にも縋る思いだった。
「…誰に聞いたんだよ、その名前。」
それを口にした瞬間、相手の顔色が分かりやすく変わる。
オドオドと周囲を見回しながら震える声。
いつもなら嗤ってやるところだが、生憎今はそんな時間さえ惜しかった。
「前にそっちが言ったんだろうが?」
「あ?…そうだったかぁ?」
助け船を出してやればあからさまにホッとした様子に、何とか苛立ちを抑えながらもう一度その『名前』を口にする。
とにかく金が欲しい、と繰り返す。
「別に今、人集めてねぇんだけど…まぁ、どうしてもってんなら紹介ぐらいはしてやるよ。」
やたら勿体付ける態度にとうとう堪えきれなくなった舌打ちが口から漏れ落ちたが、どうやら相手には届かなかったらしい。
そして携帯を取り出し、こちらに背を向けてどこかに連絡を取り始めた後ろ姿を見つめながら改めて「今後の計画」について反芻した。
一から組織を作るのに時間が掛かるのなら、すでにあるものを利用すればいい。
仕事がないのはむしろ好都合で、こちらの計画を持ち掛けてシステムだけ使わせてもらう。
大丈夫だ、きっと向こうは興味を持つし、絶対興味を持たせてみせる。
上前は、まぁ確実にはねられるだろうがそこも交渉次第だ。
それに上手くやれば、組織そのものを乗っ取ることだって、
「九井。」
ようやく通話を終えた相手が振り返る。
目が合い、ほんの一瞬息を飲んだ。
「玄兎クン、会ってやるから今から来いってよ。」
【1st stage】
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嘘つき、ロンリー。