ロバのゲーム
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「用できたらこっちから連絡するからさ、その辺のテキトーな紙に連絡先書いといてー。」
緊張していたのが馬鹿馬鹿しく思えるほど、呆気なく実現した対面。
いや、対面どころか『玄兎クン』は読んでいる雑誌から顔を上げることなく、ただゆるゆると軽く手を振って見せただけだった。
「思ったより若い」というのが第一印象で、恐らく自分と大して変わらない年齢だろうと当たりを付ける。
元は何かの事務所だったらしい溜まり場は色んな物が散乱し、指し示されたテーブル上もひどい有り様で少し不安になった。
その筋ではそこそこ有名だという話だが期待外れだったかもしれない、なんて思いつつ、とりあえず本題を切り出す。
「金が要る。」
「だからー、今ホント仕事ないんだってー。」
「仕事ならある。」
そこでようやく、チラリと向けられる視線。
が、目線だけで口を開く様子はない。
少し迷ったものの、黙っているのは先を促しているからだと勝手に解釈して予定通りプレゼンテーションを始めることにした。
主な計画の流れ。必要な人数と資金。リスクとリターン。
途中どんな指摘を受けたとしても答えられるだけの準備はしてあった。
だが、玄兎はやはり何も言わない。
それはまるで嵐の前の静けさのようで、奇妙な焦りから次第に口調が速まっていくのを感じながら、どうしても抑えることは出来なかった。
「後は人数さえ揃えばいつでもいける。勿論分け前はちゃんと」
「九井だっけ?」
と、唐突に遮られ、一瞬思考が止まった。
呼ばれたのが自分の名前だと気付くのにも時間が掛かってしまった。
「自分から企画持ち込む奴とか初めてだわ。何かあんの?」
「…とにかく金が要る。」
「金が要るって幾ら?具体的に言ってみろよ。」
「…………」
「理由言わねぇと、絶対手は貸さねぇ。いや、それどころか、もし『俺』抜きでやるようなら邪魔してやっから。」
思わぬところで引っ掛かってしまった。
求められたのはまさかの「志望動機」。
どこから話すか。どこまで話すか。
弱味を握られて利用される?ならここは適当に身の上話を騙るべきか?
もし嘘だとバレたら?そもそも動機を求める動機は?どの程度重要視している?
想定外の事態を前に、だが考えている時間はなかった。
「…少し前に、ダチの家が火事になって…」
ぽつりぽつりと話し出せば、今までの沈黙が嘘のように矢継ぎ早に質問を投げ掛けてくる玄兎。
気付けば洗いざらい話す羽目になり、最後の方はほとんど自棄になっていた。
「…なるほどなぁ。」
すると、全てを聞き終えるとほぼ同時に玄兎は不意に立ち上がり、何故か近くにあった段ボール箱を鼻歌混じりに漁り始めた。
「おい…?」
「彼女の病院、どこって言ったっけ?」
「え、あ?」
「あー、そうそう、あそこね。知ってる知ってる。ちょっと前に色々あったし。あそこの先生なら割と融通利くんじゃねぇかなぁ、多分。だからまぁ、手配とかその辺のことはひとまず置いといて、だ。あと問題なのは」
「ちょっと待てよ。一体何を」
「何ってお前、金が要るんだろ?」
何を今更、とでも言いたげに手を止めた玄兎が振り返る。
そして、未だ展開に追いつけずにいる様子を見て取ったのか、そこで初めてニヤリと笑った。
「さっきの、お前の計画じゃあ回数こなしたところで大した額にはなんねぇだろ。だったら俺に『とっておき』がある。」
【2nd stage】
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嘘つき、ロンリー。