犬ホームズと助手02


「―…無論、全力を以て調査に当たるつもりですが、あまりご期待なされない方がいいでしょう。」


ホームズの最後の言葉を聞いた瞬間、依頼人の青年が落胆するのがよく分かった。

可哀想ではあったが、しかしこればかりはいくらホームズといえどもどうしようもないことだった。


名探偵にも出来ることと出来ないことが、ある。


そして肩を落とし、耳まで垂らしながら部屋を出て行く青年の後ろ姿を見送って、改めて名探偵へと向き直った。

ホームズはちょうどパイプに火を落とすところだった。


「それで、どうするつもりなんだい?」

「どうするもこうするも…さて、どうしましょうかね。」

「どうしましょうかね、って君ねぇ…」


面白がっているようにも聞こえるその発言を注意しようとした瞬間、不意のノックに反射的に口を閉ざした。

ホームズがそれに「どうぞ」と応じると、顔を覗かせたのは麗しの我らが家主、ハドソン夫人だ。


「あぁ、どうも!ハドソンさん!もうお茶の時間ですかな?」

「いえ、ちょっと…何だか大変そうですね。」


つい先程廊下で擦れ違ったばかりなのだろう、かの残像を振り返るように問い掛けるハドソンさんにホームズが肩を竦める。


「なぁに、実はもうほとんど解決しているんですよ。」

「あら、そうなんですか?」

「えぇ。ですよね?ワトソン。」

「んん、まぁ、ほとんどは…はい。」


そう、冒頭ああは言っていたものの、実は今回の一件、すでにすっかり解決しているのだ。


ただ問題は―…



「それでハドソン夫人、ご用件は?」

「あぁ、そうでした。」


不思議そうなハドソンさんの視線に耐えきれなくなりそうになった頃、ホームズが小さく咳払いしてそちらに注意を引き、思わずホッと息を吐いた。

と、今度は不思議そうに部屋の中を見渡すハドソンさん。


「白兎さんはご夕食、どうなさるのかと思って…?」

「あ、ぜひ頂きます。」


そして、ひょこっとホームズが座るソファーの後ろから顔を出した白兎君に、ハドソンさんは「まぁ」と目を丸くしたのだった。







依頼人様のお目に届きませんように


事の発端は、つい数日前。

街角でとある婦人に一目惚れした青年は、助力を求めてかの名探偵の下を訪れた。


だがそこにまさか先客が、それもお目当ての人物が隠れていたなどとは夢にも思わなかったに違いない。


(まったく、君も罪作りなことをしてくれたものです。)
(えー…俺のせいっすか?)
(いや、しかし。彼にはこのこと、どう伝えるつもりなんだい?)
(そうですね…ここはやはり、白兎君にもう一度ドレスアップしてもらって、)
(えー…あれ、結構面倒なんすよねー…)


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七周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。