黒と大家の孫03(+銀)
そろそろ「仕事」を終えた黒が合流する頃だ。
と、腕時計を見ていた黄は、不意にその異変に気が付いた。
「?マオ…?」
つい先程までそこにいた、『猫』の姿がない。
ぐるりと周囲に首を巡らせてみたものの、どこにも影も形もなかった。
何も言わず、消えた。
そのことに一瞬嫌な感触を覚えながら、最後に黄は視線を銀の方へと向ける。
ちょうど川から足を抜くところだった銀は相変わらずの無表情で、特に変わった様子は見られな
「………来た…」
ぽつりと呟く銀。
かと思えば、続けざまに背後からどこか間の抜けた、馴染みのある声が聞こえてきた。
「あ、銀ちゃんと黄さんだー。」
その瞬間、総てを察した黄は小さく舌打ちする。
そして振り向くと、そこには予想通りの「二人」の姿があった。
「こんにちわー。」
「………おう。」
「…………」
素っ気ない返事(銀に至っては無言だ)にも関わらず、「ちょうどそこで李さんとばったり会ってさ」とニコニコと愉しげに笑う白兎。
本来黄達が接触すべきではない相手だが、その件について今更もうどうこう言うつもりはない。
それよりも今問題なのは、白兎の隣でどこか微笑ましげにそれを見下ろす中国人留学生『李舜生』。
もっと詳しく言うなら、全身黒ずくめで片手に奇妙な仮面をぶらさげている『李舜生』だ。
前に一度「うわ、李さん!なにそれ!かっこいい!」と言われたせいか、最近プライベートでも(流石に仮面は無しだが)その格好をしているらしい。
最早ME技術始動5秒前。
いい加減潔く『黒』と名乗れよ、と黄の目は白い。
「仕事が終わったらご飯食べに行こうって話してたんだけど…ねぇ、黄さん。李さん、もう上がっていいよね?」
「あ?あぁ…」
「やった!」
「……白兎。」
と、それまでぼんやりとしていた銀が突然動き出した。
「私も、行く。」
「え?いや、一緒に行くのはいいけどさぁ……」
黒と白兎の間にするりと割り込んできた銀に驚いた拍子に、白兎は僅かに後退する。
そして、眉を顰めた。
「銀ちゃんさ、何でいつも俺と李さんの間に入ってくるの?」
「…いつも一緒、だから。」
「だから李さんの隣は自分だ、って?そんなのずるい!一人占め反対!」
そう言って白兎が黒の逆隣に回り込めば、静かにそれに続く銀。
「ちょ、銀ちゃん!」「白兎、前を見て。転ぶ」と、黒の周りをまるで犬か何かのようにぐるぐる回る二人に対し、当の黒は未だ口を開かず。
ただその視線は相変わらず白兎を追い続けるのみだ。
その光景にうんざりした黄はようやく、先の猫に倣うようにして何も言わずにその場を去ることにしたのだった。
観測に基づきまして
(この際「仕事」の邪魔にならなければ、もうどうでもいい…)
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嘘つき、ロンリー。