白子と警官02(+空丸)
※原作終了後白子生存if設定。
※空丸視点。
白兎さんが、いなくなった。
何の前触れもなく仕事を辞め、住居を引き払い、気付いた時には誰にも行き先を告げないまま静かにこの地を発った後だった。
「署内じゃ近々昇進、って話もあったんですけどね…」
「そうそう。『勿体ない』って皆、言ってましたよ。」
そう苦笑する顔馴染みの警官達も、「一身上の都合」としか聞いていないらしい。
「まぁ、あの騒動の後始末で色々と忙しかったですからねぇ…ようやく最近落ち着いてきたんで、何かこう、張り詰めた糸、みたいなもんが切れちまったのかもしれません。」
最後の挨拶に来た時のその顔は「思い詰めた」というより、どこか「吹っ切れた」感じがした。
だから引き留めることはせずに、その後ろ姿を―…
「…空丸さん?」
どうかしました?と不思議そうに首を傾げる相手に、何とか曖昧に言葉を返す。
そして適当に話を切り上げると、俺は急いでその場を後にした。
(それは、本当に白兎さんだったのか…?)
喉まで出かかっていたその問いを、最後まで口にすることは出来なかった。
そもそも付き合いの長さは自分より向こうが上だ、わざわざ確認する必要はない。
それに、白兎さんがいなくなった理由にも何となく心当たりがあった。
(、だけど、)
(だとしたら、)
『近い内に顔を出すよ。』
数日前に交わしたばかりの約束。
宙太郎に勉強を教えて欲しいと頼むと、戸惑いながらも「自分で良ければ」と了承してくれた白兎さん。
(……約束を破るなんて、あの人らしくない、よな…)
これが悪あがきだということは、十分に理解している。
無意識に胸元を押さえると、懐に入れていた紙がかさりと小さな音を立てた。
かれよたれそとつれならん
「ただいま。」
掛けられた声に振り向くと自分と同じ顔がそこにあり、一瞬本当に驚いてしまった。
だがすぐに、数日前にその姿を見送ったことを思い出して「お帰りなさい」とそれに応える。
すると次の瞬間、目の前の人物は見慣れた白と紫へとその色を変えた。
「望み通り、方々への挨拶は済ませてきた。」
「…………」
「これで思い残すことはない、だろう?」
ここで「否」と返したところで、「そっちこそどうなんだ?」と聞き返したところで、きっとこの人はただ笑うだけ。
本当に、狡い人だ。
「……自分に行かせていただければ、お手数をお掛けせずに済んだのですが。」
だからせめてもの抵抗にそう口にすれば、やはりその人は優しく笑って、それ以上の言葉を封じたのだった。
(『半端者とはいえ、あそこには風魔がいる』)
(そう言って書かされた文は、ちゃんと届けられたのだろうか?)
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八周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。