功介と教師02


昔馴染みに似ている、と話した効果だろうか。

最近廊下を歩いていると、その男子生徒からよく声を掛けられるようになった。


大半は雑談であるものの、時々俺が教師であることを思い出すのか、教科書片手に質問しに来ることも。


それは別に構わないのだが―…



「…せめて俺の担当教科のを持って来いよ。」


そうぼやきながら受け取ったのは、これまで現国、古文と続き、今度は英語。

開かれたページはちょうど有名なラブロマンスのワンシーンだったが、そこに知っている登場人物の名前があったからそれと分かっただけ。


残念ながら俺の英語力はすっかり錆び付いており、いくら眺めても一向に内容なんて頭に入ってこない代わりに、ただただ懐かしさを感じる。


「確か、津田は医学部志望だったよな…なら英語よりドイツ語じゃないか?」

「それなら一つだけ、しっかり覚えた言葉がありますよ。」


パラパラとそれを捲りながらその場しのぎに適当な言葉を口にすれば、笑って話に乗ってきた津田もどうやら端から期待していなかったらしい。

それはそれで複雑だな…と思わず苦笑してしまった。


そして「どんな言葉?」と先を促せば、未来の医師が口にしたのは厳めしいドイツ語、のイメージにしては何となく優しい響きを持つ言葉だった。


「へぇ…それで、意味は?」









「そ、それで、どうだった…?」

「どうって、別に何も。」

「じれってぇなぁ…もういっそ押し倒しちまえよ。」

「はぁっ?ちょっ、千昭ってば何言って」

「それもいいかもな。」

「功介まで?!」

「ははっ、冗談冗談。真琴、本気にすんなって。」

「…もー……あ、そう言えば後輩ちゃん達も「協力します!」って、何か色々張り切って準備してるみたいだけど…?」

「気持ちだけもらっておく。最初から在学中にどうにかしようとは思ってねぇから。」

「え?そうなの?」

「あぁ。大体あの人、生徒はまず相手にしねぇだろ。」

「……あー、まぁ、白兎くん、意外と真面目だしね。」

「つまり卒業してからが勝負って訳か…ったく、気の長い話だぜ。」






フラグメント不感症

(別に気付かなくてもいい)
(今は、まだ)


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八周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。