矢一郎といとこ01


元ネタ







「さぁ、兄貴!」

「今こそ、その愛が試される時だ!」


外出から戻ってみると、二番目の弟が分裂していた。

いや、勿論実際にそんなことは有り得ないのは解っている。


本物は片方だけで、もう一方は誰かしらが化けているだけであろう。


そしてそんなことをするような奴は大体見当が付いている。


「…また来ていたのか、白兎。」

「おう!」

「あ、こら、白兎兄さん!そこで返事をしてはバレちまいますぜ!」

「あ、やべ!」


しまった!とわざとらしく己の口を押さえるは向かって左の矢三郎。

「というか今お前も名前を呼んだだろ!」と責められ、「あ、やべ!」と右の矢三郎も同じくその口を押さえた。


だが、ここで安易に左が白兎だと決め付けてはならない。


「ところで矢三郎よ、『愛を試す』とは何ぞや?家族愛のことかい。」

「何だ、矢三郎よ。お前さん、知らないのかい。兄貴は白兎兄さんにホの字なんですぜ。」

「お、おい矢三郎!でたらめを言うな!」


右が問い掛け、左が答えるのを慌てて咎めた。

矢三郎は昔から妙な誤解をしている。


ということは左が矢三郎…いや、それとも裏をかいて…さらにその裏を…


「それで兄貴、」

「どっちがどっちか分かったかい?」

「ぐっ…」


無駄に芸が細かい二人は『分裂した矢三郎』という設定を忠実に再現しているのか、いつもより若干幼い少年に化けている。

そのため俺より頭一つ分は小さい二人がこちらを上目遣いに見上げ、


(くそっ、これが白兎の姿であればどんなに良かったことか!って何を考えているんだ、俺は!?)


思わず頭を抱えてしまった。






「…なぁ、矢三郎よ。矢一郎の奴、何だか一人で百面相をしだしたぞ。」

「兄貴は肝心な時に錯乱してしまうタチなんで。お遊びもこの辺にしておきましょう。」

「何だ、つまらんなぁ…今度は弁天様のところでも行ってみるか?」

「ご冗談を。」

「んじゃ矢二郎のところに行くか。」

「それならば不肖下鴨矢三郎、喜んでお供しやすぜ。」







たぬきのはなし

夷川 白兎。

あの忌ま忌ましい夷川の嫡男であり、我らが従兄弟であり、そして狸である。


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嘘つき、ロンリー。