矢一郎といとこ02


「あら?白兎、来ていたんだねぇ。」

「あ、おばさん。こんにちは。」


ひょっこりと顔を覗かせた母上に、あっさりと変化を解いた白兎。

それに思わず口元が引き攣りそうになったものの、その一瞬を見逃さずに俺は白兎の首を引っ掴んだ。


「うおっ!?」

「あぁ!白兎兄さん!卑怯だぞ、兄貴!」

「やかましい!」

「あらあら。ふふふっ。」


同じく変化を解いた矢三郎が慌てて白兎の手を掴み、追い縋る。

「矢三郎!」「白兎兄さん!」とお互いの名を呼び合う悲痛な声はわざとらしく芝居がかっていて、ますます苛立った。


ちらりと双方の顔を盗み見れば、どちらもニヤニヤと笑いを堪えているのが明らかで、それがまた余計に癇に障る。


「まるで運命に引き裂かれた恋人達みたいだねぇ。」


そんな光景に大好きなタカラヅカでも連想したのだろう。

そう言って母上が微笑んでいるが、冗談ではない。


下鴨と夷川。

いや、それ以前に二人は男同士であって―…


「ぐっ、や、矢一郎っ…首が、首が締まって…っ」

「兄貴っ!白兎兄さんがっ!」

「えぇい!その手には乗らんからな!さっさと帰れ、白兎!」


懲りずに芝居を続ける二人はなかなか迫真の演技だ。

が、構わず白兎の身体をずるずると引き摺っていく。


そんな二人の悲鳴を背に受けながら、俺は最早振り向きもしなかった。

また母上が笑う。





たぬきをはなし

話せばまた長くなり、放せばまた面倒が起きる。

糺ノ森は今日もまた賑やかであった。


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嘘つき、ロンリー。