セブルスと蛇寮の生徒02


倒れたティーカップ。

こぼれ、流れだした中身。


テーブル上に広がるその惨状を前にし、だが白兎は動くことが出来なかった。


訝しげに掛けられる声にも反応せずにいると、不意に呆れたような溜め息が一つ。


「あ…」

「まったく…一体、何をしておるのだ。」


そして瞬く間に綺麗に片付けられていくテーブル。

ソファーから立ち上がった魔法薬学教授は何事もなかったかのように、次の授業の準備だろう、こちらに背を向けて何やらごそごそと作業を始めていた。


(物体移動に乾燥魔法…いや、単純に巻き戻しの呪文?何にせよ、上級生にもなって咄嗟に何一つ思い付かないなんて、呆れられるのも無理は……いや待て、それよりも何よりも、)



今のは一体、何だったのだろう?



『生徒として扱っていいのか?』

押し掛け女房よろしく通い詰め、なし崩し的に傍にいることを許されるようになったのは、つい最近のこと。

何も言われないことをいいことに、自分は少し調子に乗っていたのかもしれない。


(額にキス…は流石にやり過ぎだったか…)


恐らく、あれはその意趣返しのようなものだったに違いない。

現に自分は驚かされ、面白いほど取り乱してしまったのだから。


でなければあの教授が、セブルス・スネイプが素面であんなことを言うはずが、



「……先生?」



と、あれこれ考えを巡らせていたところで、白兎はふとその異変に気が付いた。


「どうされました?こっちを見てくださいよ。」

「……うるさい。」


隣に並び立ち、その顔を覗き込もうとすれば、分かりやすいほど逸らされる視線。

これはまさか、いや、そんなまさか、



「…先生、もしかして照れて」

「っ、黙れっ!」


思わず噴き出してしまった。





ティータイムのその後も

(長く長く香る、甘い余韻を)


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嘘つき、ロンリー。