リドルと獅子寮の生徒02


※『秘/密の部/屋』終了後。









鞄に本を詰め込もうとした瞬間、中から“かさり”と一枚の紙が滑り出し、つられるようにその手を止めた。

そこにちょうど通り掛かった同級生がそれを拾い上げる。


「これ、白兎の?」

「あぁ、ありがとう。」


そう言って手を差し出すも、それに気付かないのか、級友はなかなかその「落とし物」を返してくれようとしない。

不思議そうに首を傾げながら、頻りにその表裏を見比べている。


だけど何度見ようが、それはただの羊皮紙だ。


何も書かれていない、まっさらの、紙。


「栞の代わりに本に挟んでいたから、多分それが滑り落ちたんだ。」

「栞?」

「他に適当なのがなくてさ。」

「なるほど。」


じゃあ何か良いのを見掛けたら、今度プレゼントするよ。

なんて休み明けの約束と共に寄越されたそれを、俺は苦笑混じりに受け取った。


「ありがとう。楽しみにしてる。」






「…君は悪いやつだな。」


ふっ、と吐息にも似た笑みが降りかかり、顔を上げる。

するとベッドの端に腰掛け、こちらを見下ろすスリザリン生と視線がかち合った。


「約束は果たされない。それを知っていながら『楽しみにしてる』だなんて、よく言えたものだね。」

「……………」

「本当に、悪いやつだ。」


愉しげに繰り返されるその言葉に、「君には言われたくない」と喉まで出かかり、何とかそれを飲み込んだ。


図星、だった。


『秘密の部屋』の怪物が倒されるのとほぼ同時に沈黙した、日記の「彼」。

端からただの魔法道具だとは思っていなかったが、それはつまり、そういうことなのだろうと薄々察することは出来た。


だけど俺はその存在について、教師どころか仲の良い友人達にさえ話さなかった。



“―…助けてくれ、白兎。”



ボロボロの「彼」が初めて目の前に現れても、その口から「彼」の正体を教えられても、それでも誰にも話すことはなかった。


俺は、悪いやつだ。


「忘れ物はないかい?」


ようやく荷造りを終え、鞄を片手に立ち上がると、そう言って優しく微笑みかけてくる「彼」。

その表情は想像した通り甘く、思いの外冷たい。


「……大丈夫だよ。行こう、リドル。」


もし仮にあったとしても、きっとそこにはもう、何の未練もないだろう。

そして俺は部屋を出る寸前、近くにあったごみ箱にあの羊皮紙を投げ入れたのだった。




だって、もうすぐ触れられる

(その温もりを夢想しながら、)
(徐々に失われていく体温を感じながら、)

(そうしてホグワーツから生徒が一人、姿を消した)


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十周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!


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嘘つき、ロンリー。