臨也と弟02


これから仕事だというバーテン服の後ろ姿を見送り、それとはまた別の方向へ足を踏み出した。


その瞬間。


唐突に真横から現れた手に腕を掴まれ、思わずバランスを崩し掛ける。


「ぅおッ…?」


襲撃、の二文字が頭を過り、反射的にコートのポケットに手を伸ばしたものの、生憎そこには何もない。


というか、そもそもコートそのものがないことを忘れていた。


(やっべそういやアレ入れっぱのまま昨日一緒に捨てたんだっけ?今日他に何持ってたっけかなっていうか今助け呼んで叫んだらもしかしてまだ間に合)



「やぁ。」



そしてビルとビルの合間の、狭く薄暗い路地に引きずり込まれた先で対峙した『襲撃者』の正体に息を飲んだ。


「白兎?」

「…っぶね!ほんっとあっぶね!」


危うく『池袋の自動喧嘩人形』召喚するところだった…!と冷や汗だらだらの俺を余所に、そんなニアミスも何のその、というかきっと恐らく敢えてこの絶妙なタイミングを見計らっていたのだろう『折原臨也』は相変わらず胡散臭い笑みを浮かべたままだ。

本当流石だ、無駄に凄くて意味が解らない。


とりあえず、ここは一旦落ち着こうと大きく息を吸い込み、そっと深く吐き出した。


「つーかこんなところで何してんだよ、兄貴…」

「何って、お前の落とし物をわざわざこうして持ってきてやったんじゃないか。」


そう言って、兄貴がどこからともなく取り出した『それ』はつい先程まで俺が探していたもの。

それを俺が昨日『捨てた』ことも知っている癖に、わざわざ『落とし物』と称した上、「まったく、世話の焼ける弟を持つと兄貴は苦労するなぁ」とか何とか、やけに恩着せがましい。


とは思ったものの、それを口にすると面倒なことになることは分かり切っていたので、素直に受け取ることにした。


「あー、それはわざわざ、どーも…」


が、伸ばした手は再び空を切る。

掴み損ねた『それ』は兄貴の手の中でくるりと向きを変え、次の瞬間にはその切っ先が俺の喉元に突き付けられ、


「それで?さっき、シズちゃんと何話してたのかなぁ?」


結局面倒なことになった、と舌打ちした。




××××・コンプレックス

(俺が何やっても気にしない癖に、あの人が絡むとすぐこれだ)
(何ならお次は金髪に染めてやろうか)


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嘘つき、ロンリー。