堂上と同期01
初陣というものは、いつだって誰だって、多大なる緊張と少しの興奮を孕んでいるもの。
それが好転すれば勿論言うことなしなのだが、その逆となると目も当てられない。
だからこそここは一つ、誰かが一肌脱いでやらねばならないと、そう思った。
「ということでコマっちゃん。例の作戦、いってみようか。」
「作戦?」
「え、アレやるの?本当に?」
「おい、一体何の話だ?」
強張った表情で隊列を組む後輩達を後方より見守りながら、コソコソと言葉を交わす三人組。
両端二人は意思の疎通が出来ているようだが、真ん中の一人だけ話についていけず、訝しげに眉を顰めて左右を交互に睨み付けた。
「馬鹿なことはやるなよ。」
「大丈夫大丈夫。お前は何もしないでいいから。…一同、注目!」
カッ、とその声は見事に大きく響き渡り、その場にいる全員の視線を一斉に集めた。
それまで苦言を漏らしていた男も、あまりの迫力に唖然とその姿を見上げ、いや、もしかしたら見惚れてしまったのかもしれない。
そのせいで男は両隣から伸びてきた腕に気付くのが遅れてしまった。
「一発芸!捕らわれた宇宙人!」
「…え、マジでやったんですか?」
「えぇ、マジでやったんですよ。」
ケラケラと笑いながら、まるでオウムのように返ってきた答えに郁は思わず顔を引き攣らせた。
だが内心、「この人ならやるだろうなぁ…」という思いも全くなかった訳ではない。
『俺の入隊理由?そりゃあ、アレだよ。全ては猥褻図書のために!』
女性陣を前に堂々と言い放った白兎に対し、堂上が「こういう人間がいるから『メディア良化法』なんてものが出来るんだ」と吐き捨てていたのはさて、いつのことだったか。
その前のドロップキックが見事すぎて、他の記憶はひどく曖昧だ。
「そ、それで怒られなかったんですか…?」
今度は柴崎が恐る恐る問い掛ける。
答えたのは小牧だった。
「勿論、当時の教官達にしこたま怒られたよ。白兎だけ、だけど。」
「小牧だって結構面白がってやってたのになー。みんな、いっつもコマっちゃんには甘いんだから!俺だって可愛い後輩達の緊張を和らげるために頑張ったのに!」
「まぁ、和らげるどころか凍りつかせていたけどね。」
今でも充分ドン引いてます、と郁は言いたかったが、それよりももう一つ気になることがあった。
この流れで聞くのは少し怖いが、今後の参考のためにも郁は聞いておかなければならなかった。
「ちなみに、堂上教官の反応は…?」
一瞬、顔を見合わせた二人。
だがそれは本当に一瞬のことで、小牧はすぐに苦笑を浮かべ、白兎はどこかあらぬ方向へと視線を飛ばした。
「…俺ね、最近郁ちゃんと堂上のやり取りを見ていて、しみじみ思ったよ。」
「はい?」
「あいつも丸くなったもんだって。」
「「………え?」」
上には上がいた。
(まさかの想像以上、いや、最早そこから先は想像も出来ない領域だった。)
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五周年企画より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。