【ゲーム(強制)スタート】01


話は今から約六年前まで遡る。


生き残った男の子。

名前を言ってはいけない例のあの人。


魔法魔術学校、ホグワーツ。


それら一つ一つ耳にする度に奇妙な既視感を覚えつつも、特に気にしなかった十歳の俺。

だが十一歳となって無事ホグワーツに入学を果たし、組分け帽子によってハッフルパフ寮へと振り分けられた瞬間、唐突に天啓が下った。


それは、正に雷に打たれたような衝撃だった。



(ここって、あの【世界的に有名な児童書】の中の世界か…!?)



前世の記憶なのか何なのかよく分からなかったが、それは今問題ではない。

とにかくその瞬間、俺は色々と思い出した。


思い出して、しまった。


『同じ寮だね。初めまして、僕はセドリック・ディゴリー。』


知ってる!

ついでに言うと、いつどこで死ぬのかまで知っちゃってるよ…!


『?どうかした?』


原作どころか日本語訳すらもろくに読んだことないというのに、一度だけテレビ放送で目にしたそれは一種のトラウマものだった。

最近のファンタジーって怖いんだな…!と心底思った映画、シリーズ第4弾。


ある意味その元凶とも言える人物に手を差し出され、笑顔が引き攣ってしまったのはまぁ仕方ない。


『い、いや、その……よ、よろしく…?』

『よろしく。』


出来ればよろしくしたくはない…と後悔しても、握手を交わした後では時既に遅し。


(…いや、待てよ。逆にこれはチャンスじゃないか…?)


このまま仲良くなってしまえば、上手くいけば彼を助けることが出来る…かもしれない。

要はこれから約六年後に開催されるであろう三校対抗試合で、その代表選手に選ばれなければいいだけ…かもしれない。


つまり、だ。

立候補しないように説得することが出来る親友、あるいは選ばれないぐらい成績が落ちるように足を引っ張る悪友ポジションに収まってしまえば、彼の身の安全も俺の心の安寧も守られるという訳だ…!


(え?魔法を磨いて俺自身がセドリックを助ける?無茶言うな、主人公ですら助けられなかったのに俺にどうこう出来るはずがない。)

(セドリックの代わりに他の誰かが死ぬかも?悪いがそこまで責任は持てない。なので本当悪いが代表はスリザリン辺りがなればいいと思う。)


ということで少々回りくどい画策の末、俺はセドリックの一番親友兼悪友ポジを勝ち得ることに成功した。

足掛け六年、俺って偉い。マジ偉い!


…が、顔良し・頭良し・性格良し、強いて欠点を挙げるならば少々距離感がおかしい俺の親友セドリック・ディゴリーはそれを上回る優等生だった。


悪友(俺)の面倒を見つつ、自分の成績をもキープ。

そして親友(俺)の説得にも、「自分の実力を試してみたい」と断固として譲らなかった。


「それに優勝したら君に伝えたいことがあるんだ」…って止めろ!それ死亡フラグ!!








「白兎。」


ダンスパーティーを抜け出し、バルコニーに一人佇む後ろ姿を見付けると声を掛けた。

はたと夢から目が覚めたように振り向いた表情は愛らしく、ついつい頬が緩んでしまう。


「セドリック?あれ、チョウはどうした?」

「元々、一曲だけの約束だったんだよ。」

「ふーん…?」

「もしかして嫉妬してくれた?」

「おいおい…いくらダンスの相手が見付からなかったからって、そこまで俺は心狭くねぇよ。」


そう苦笑する白兎は知らない。

数人の女子生徒が彼にアプローチしようとしていたことを。


そして、それを全て僕が握り潰してきたことを。


「セドリック?どうした?」


長い時間ここにいたのか、抱き締めた白兎の身体はすっかり冷たくなっていた。





隠しルート、突入中。

(フラグは先に回収した者が勝ちです)

*前次#


戻る

嘘つき、ロンリー。