【ゲーム(強制)スタート】02


ホグワーツ友人第一号の未来を予知してしまったのは、今から約五年前。

それはつまり、あれから五年が経ったという訳で、残り時間はあと一年ということだ。


(…あと一年、か……)


長ぇなぁ…と無意識に口に出してしまっていたらしく、隣から聞こえてきた小さな笑い声にふと我に返る。


「大丈夫、白兎もこれくらいすぐに書けるよ。」

「えー、そうかぁ…?」


中庭のベンチに並んで腰掛けた俺達の膝の上には羊皮紙が広げられ、今度の課題について話している途中。


いつものことだが、よほど出来の悪い俺のことが心配なのか、セドリックの説明は徐々に熱が入っていき、いつの間にか俺はベンチの端まで追い詰められてしまっていた。

肩や背中に回されていた手も、今や俺の腰を掴んで離さない。


それでも周囲への配慮は忘れていないらしく、騒がしくならないように「ここはこう書いたらいい」「ここにはあの文献を」と顔を寄せて話す声は低く、まるで囁くようだった。

元々スキンシップは多い方だったが、ここ最近、さらに距離感がおかしくなったような気がする。

が、そこはまぁ、セドリックだから仕方ない。

途中、何度か別の友人から声を掛けられれば爽やかな笑顔で対応する姿も、流石としか言いようがなかった。


(そうなんだよ…いいやつなんだよ、本当…いっそ主役を張ってもいいくらいなのにな…)


それなのに何故、セドリック・ディゴリーは死ななければならないのか。

それは俺にとって、今も昔も最大の難問だった。


そして、一向にその最善の解決策が見当たらない、ということも。


(……いくら楽観的な俺でも、正直これはきついわ…)


あと一年が、限りなく長く感じてしまう。


そうそっと溜め息を吐き出したところで、不意に視界の端にいる数人のグリフィンドール生に気が付いた。

それと同時に本当の『主役』に思いを巡らせる。


賢者の石を守り、秘密の部屋の怪物を倒した主人公はきっと、脱獄して今逃げ回っているという囚人のこともこれからどうにかしてしまうのだろう。

どうやるのか、俺は知らないけれど。


(ならセドリックのことも助けてやってくれよ、ハリー・ポッター…)


少々恨めしくなってしまったのは、多分俺の八つ当たりだろう。


何もすることが出来ない自分が、とにかくもどかしかった。


「白兎!セドリック!」









「僕達は先に戻るけど…?」

「あぁ、俺達ももう行く。」


別の友人達に促されて立ち上がった白兎に、急に空気が冷え込むように感じた。


最近、白兎の様子がおかしいと気付いたのは、僕がずっとその傍で見てきたからだ。

話をしていても上の空になったり、一人そっと溜め息を吐くことが多くなった。


原因は、その視線の先にいる『誰か』だろうか。


(あれは、グリフィンドール生か…?)


基本、白兎の交遊関係は自寮のハッフルパフで完結してしまっている。

だから白兎の友人は僕の友人で全て把握済み、そしてそれらにはいつも目を光らせていたはず、だったのだが。


(くっ!他寮なんて、盲点だった…!)


いや三年生の時に一度だけ、『ハリー・ポッター』に興味を持ったことは確かにあった。

だがあの時だって、何気なさを装って尋ねたら「いや、思ったより普通だなって思って」と返されて安心していたというのに…


「行こうぜ、セドリック。」


そんな僕の心境を知らず、振り向いた白兎が手を差し出す。

それに笑顔で応えながら、「早く手を打たなければ」と考えを巡らせ、僕はようやく腰を上げたのだった。







求む、攻略本。

(卑怯でもいい!誰か、ウラ技を教えてください!)

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嘘つき、ロンリー。