【先達はかく語りき】01


「じんない?」

「いや、じんのうちって言うんだ。」

「じんのうち?…あ、じゃあもしかしてわびすけと兄弟か何かか?」

「………」

「知らね?じんのうちわびすけ。おれ、去年同じクラスだったんだけど。」

「……知ってるよ。」










田舎の小学校の生徒数なんて高が知れている。

それも同学年となるとますます世間は狭く、「友達の友達が友達だった」なんて特に珍しい話でもなかった。


だから当時、『あいつ』と共通の友人が出来たところで何の不思議はなく、そうと知った時点で自分から離れてしまえば全ては丸く収まった。



…はずだった。



「理一、帰れるか?」


教室の出入口から顔を覗かせた白兎に「ちょっと待ってくれ」と応えて、最後に筆箱を鞄に仕舞う。

そしてその鞄を手に白兎の下へ向かった。


「お待たせ。」

「いや、そんな待ってないし。」


律儀なやつ、と笑う白兎との付き合いも、あと数年も経てば、その年数は二桁に昇る。


長いようで短かった時間。

これまで色んなことがあったが、白兎とはそれなりに良い関係を築いてきたと思う。


「んじゃ、帰」

「白兎ー。」

「うおっ…と。脅かすなよ、侘助。」


『こいつ』との関係も、よく持った方だと思う。

白兎の肩に腕を回した侘助は、俺に気付いていないのか、そのまま白兎に向かって話し続けた。


「なぁ、帰りにどこか寄ってかね?」

「あぁ?俺は別にいいけど、理一にも聞いてみろよ。」

「…んだよ、こいつも一緒かよ。」

「俺が一緒で悪かったな。」


皮肉混じりに侘助の言葉を繰り返してやれば、小さく舌打ちする侘助。

未だ白兎のことを離そうとはしない。


「いや、理一は悪くないだろ。てか、いい加減離れろコラ!」

「何だよ、こいつの肩持つのか?」

「そもそも俺は理一と帰ろうとしてたんですぅ。いいから離せって、暑い!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人の後ろをクラスメイトが数人、通り過ぎていく。

それらと目が合う度に軽く挨拶を交わしていると、不意に名前を呼ばれた。


「ったく…で、どうする?理一。」

「ん?」

「行くのか行かねぇのかって聞いてんだろ。」

「ちなみに侘助は買い食いしたいそうです。」


笑う白兎に不満げな侘助。

二人の様子を見ればどちらが勝ったかなんて一目瞭然で、思わず笑ってしまった。


「俺も、別に構わないよ。」







最善のものを希望せよ。しかし最悪のものに備えよ。 「西洋格言」

(私は最悪を希望し、最善に備えます)

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嘘つき、ロンリー。