【seven】07


「…笑えない冗談。」


流れる亜麻色の髪を一房掬い上げ、白兎は溜息を吐いた。


まるで眠っているような、穏やかな表情の愛花。

だがそうでないことは、足元に広がる血溜まりにより一目瞭然だった。


『白兎、アイスを買ってきて下さい。』


今から数十分前、家に帰り着く寸前に掛かってきた一本の電話。

何でアイス?と問えば、「さぁ?急に食べたくなりました」とおざなりに返された。


『…何を買ってくればいいの?』

『そうですね…じゃあ少し奮発して、少し高いのを。』


あの時に無視して帰宅していれば、今のこの惨状は防げたのだろうか。

白兎はもう一度溜息を吐き、「本当、笑えない」と呟いた。


「あー救急車、いや警察?親父にも連絡しねぇと…」


しんと静まり返った室内に、白兎の声だけが響く。

当人は必死に平静を装っているようだが、握り締めた携帯を一向に開く様子はない。


買ってきたアイスも足元に落としたまま、それはすでに溶けだしてしまっていた。


「…兄ちゃん、今どこにいんだろ…吉野くんと一緒かな……」


さらさらと掌から流れ落ちる長い髪を、ただぼんやりと眺める白兎。

だが不意に、その顔に苦笑のようなものが浮かぶ。


「なぁ、どうしよう、姉ちゃん。」


そう言葉を投げ掛けるも当然返事はなく、




「俺、泣けないかも。」




代わりに白兎の背後で扉が開く音がした。







【怠惰】

(それは、口実。)


the end.

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嘘つき、ロンリー。