【seven】06


迷った挙げ句、口にしたのは「大丈夫?」なんて月並みな言葉。

言って、すぐに後悔した。


「大丈夫だって言ったら吉野くん、信じてくれます?」

「…信じない、かな。」

「でしょうね。」


だからこうやって、学校帰りにわざわざ俺の顔を見に来るんでしょ?


形だけの疑問符に何だかからかわれているような気がして、僕はそっと目を逸らした。

白兎くんは前方を見つめたまま、こちらを見向きもしない。


「行方不明の兄貴に見習わせたいですね。」

「…白兎くんは、どうして真広に付いて行かなかったの?」

「置いて行かれたんですよ、俺。」

「え。」


思わず立ち止まる。

つられて足を止めた白兎くんが不思議そうに振り向いた。


「置いて行かれた?真広に?」

「はい。主に足手まといという理由で。」


ありえない。

そう反射的に返そうとしたそれは何故か言葉にならなかった。


「酷い兄貴っすよね。姉を亡くしたばかりの幼気な弟を一人、家に残して行くんですから。」


急速に感じ始めた違和感に、白兎くんのいつもの軽口が遠い。


何かが、おかしい。


(…よくよく考えてみれば、あの真広のことだ。いくら白兎くんが断ったところで、有無を言わせずに連れて行くはず。)

(愛花ちゃんが…殺されて、白兎くんはたった一人の兄弟だ。それを置いて行くなんて、ありえない。)


(でも実際、白兎くんはここに残って……)


置いて行かれた?


置いて、行かせた?



そうなるように、誰が、仕向けた?



「吉野くん。」


呼ばれた名前に勢いよく顔を上げる。

いつの間にか白兎くんは携帯を取り出していて、しばらくそれを見ていたかと思えばパタンと閉じた。


「時間あります?良かったら姉ちゃんとこに寄ろうかなって思ってんですけど。」

「え、あ、うん。付き合うよ。」


僕のぎこちない返事を特に気にした様子もなく、白兎くんは「じゃあ行きましょうか」と促して、僕に背を向けた。







【強欲】

(それは、矛。)

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嘘つき、ロンリー。