【kiss-er】01
「良かったら、また会えないかな?」
今度は二人っきりで。
その言葉に一体どれだけの勇気を要したか、きっと彼は知らないだろう。
「…からかってんのか、アンタ。」
「お待たせしました。」
嗅ぎ慣れたコーヒーの香りと、見慣れない柔らかな笑み。
差し出されたそれを「ありがとう」と受け取りながら、少しだけ遠い過去に思いを馳せ、目を細めた。
「思ってもみなかったな…」
「はい?」
「こうして君と、穏やかな時間を送ることが出来るなんて。」
あわよくば、カウンター越しの1mにも満たないこの距離さえも取り払いたいところだが、流石にこれ以上は贅沢かと苦笑した。
つられるように白兎くんも肩を竦めて笑う。
「そうですね…俺もまさか、“炎の王”とこうして向き合うことになるなんて、夢にも思いませんでしたよ。」
人は変われば変わるものだ。
目の前の物腰柔らかい店主を見て、誰が暴風族のトップだったなんて思うだろう。
それも、少々“荒め”の。
『次は絶対勝つからな…精々、首洗って待ってろよ。』
「さて、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
聞き慣れない敬語に促され、「そうだな…」とカウンターに置かれたメニューに手を伸ばす、
フリをして、その傍に置かれていた白兎くんの手を取った。
「!なん」
「素敵な店主を、テイクアウトでお願いするよ。」
夜の散歩でもどうかな?
そして僕は彼の手にそっと口づけを落とした。
手なら尊敬
「…からかわないでくださいよ。」
少し困ったように首を傾げる白兎くん。
だけど僕の気持ちは、今も昔も変わってはいない。
そして彼は、自分の価値を今も昔も解ってはいなかった。
(君の“走り”をすぐ傍で見たいんだ。)
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嘘つき、ロンリー。