【kiss-er】08
「店長さんってカノジョいるんですかぁ?」
「生憎、そういうのに縁がなくて」
「えー、うっそぉ!信じらんなぁい!」
途端に響く少女達の歓声。
その接客に当たっていた店主は釣り銭を渡し損ねて苦笑するばかりだ。
ふと店の扉が開いた。
「いらっしゃい。」
こんな時間にいらっしゃるなんて、珍しいですね。
親しげに続けられた言葉につられて、少女達が振り向く。
そして新たに現れた客は甘い笑みを浮かべ、事もなげに応えた。
「急に君の顔が見たくなってね。」
「…もしかして怒った?」
「いえ、別に。」
そう否定の言葉を返しながらも白兎くんの表情は少し硬い。
何がまずかったのかよく分からなかったけど、とりあえず謝罪を口にした。
彼の機嫌を損ねたのなら、悪いのはきっと僕だろう。
だけど白兎くんは「だから別に怒ってませんって」と繰り返し、そして小さく溜息を吐いた。
「でも本当にどうしたんです?こんな時間に来るなんて。」
白兎くんの言葉に、ちらりと壁時計へ視線を向ければ、午後三時を少し過ぎた辺りだ。
喫茶店を利用するならちょうどいいだろうけど、確かにこの時間に来るのは初めてかもしれない。
ここを溜まり場にしているライダー達の姿がないと、店内はとても静かだ。
「君の後輩くんが教えてくれてね。様子を見に来たんだよ。」
『白兎さんの店長キャラって女ウケいいんすよね。夜は俺らがいるからいいんすけど…気を付けた方がいいっすよ?』
一言一句違えずにそのまま伝えれば、「あの野郎…余計なことを…」と舌打ちが聞こえた。
「いちいち信じちゃダメですよ。あいつら、適当なことしか言わないんですから。」
「そうかな?さっきの様子を見ると、間違ってはいないと思うけど。」
「………」
ばつが悪そうに目を逸らす白兎くんはどうやら図星だったようだ。
その様子に目を細め、カウンターに置かれた白兎くんの手を取り、引き寄せる。
「心配だなぁ…いっそ所有印でも付けようか。」
その手を撫でて、握って、唇を寄せて。
さてどこに付けようか、なんて微笑めば、「もう好きにしてくださいよ…」と苦笑混じりに握り返された。
それ以外は、狂気の沙汰
(あんたが触れてねぇとこなんて、もうねぇんだから。)
fin.
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嘘つき、ロンリー。