犬牟田と左腕02


※モブ(腐)女子視点。








 
「そういえば君の二つ星昇格の話、あれ無くなったから。あぁ、勿論新部部長就任の件もね。」


定期的な事務報告の合間、まるで『今日はいい天気だね』くらいの気軽さで挟まれたそれ。

言われた当人も特に気にすることなく、同じくらいのノリで「そうですか」と返しただけだった。


が、それをたまたま、本当にたまたま、偶然盗み聞いてしまった情報戦略部所属の女子生徒はその瞬間、思わず持っていたバインダーを落としそうになる。


(え?え?二つ星昇格?部長就任?何それ?何それ?聞いてないんですけど。そんな話、あった?え?なかったよね?)


必死に己の記憶を辿るものの、どこまで遡ろうと二つ星のふの字も出てこない。

だと言うのにいきなりそれらの取り消しとは、事態は知らぬ間に色々と進んでいたようだ。


バインダーを抱え直すと、彼女は改めてひっそりこっそりと二人の方を盗み見た。


我らが情報戦略部委員長と、その右腕とも呼べる男子生徒。

どちらもこちらの様子には気付いておらず、


(完璧に二人の世界!…て萌えてる場合じゃないわ!平部員とは言え、これくらいの情報を入手出来なくては情報戦略部の名折れ…!)


完全に自己の行動を正当化し、再び盗み聞きの体勢に戻った彼女は(何かあったらみんなに報告しなきゃ!)と意気込んだ。


ちなみにここでの『みんな』とは情報戦略部のメンバーではなく、少し腐った、彼女の同志達のことを指している。


「あまり驚いていないようだね。」

「…不確かな情報に振り回されるようでは、ここ情報戦略部ではやっていけませんからね。それとも驚いてみせた方が良かったですか?」

(従順に見せかけたイタズラっぽい笑みとか!もう白兎君、誘っているとしか思えない!)

「いいや。ただ残念そうにも見えないなと思っただけだよ。」

「残念?端から期待なんてしていませんよ。」

(ですよね!二つ星昇格はまだしも、新部の部長就任となるとお二人は物理的に離ればなれになってしまいますもんね!それを悲しみこそすれ、喜ぶなんてありえない!委員長もそれ、分かってる癖にわざわざ言わせるとか、本当どS!けしからん、もっとやれ!)


他の仲間は『運動部統括委員長による略奪愛』やら『風紀部委員長相手の誘い受』やらを期待しているようだが、やはり『情報戦略部委員長の右腕という名の嫁』こそが王道!

なんて、誰に向ける訳でもなく心の中で大主張しながら、彼女はwktkと続きを待った。


そして、本日最大の爆弾が落とされる。



「それに、『どこかの誰かさん』なら、どうにかするだろうと思っていましたから。」



思わず鼻血を噴き出しそうになった。






噂を信じていいですか?

「っ、ちょ、『どこかの誰かさん』とか言い方可愛すぎっ!ほら、委員長も顔真っ赤にさせて必死に目を逸らそうとしてる!あれはもう襲いかかる5秒前だね!」

(…余談だが、彼女の同志の中には『白兎スパイ説からの超どシリアス悲恋』なるものを支持する輩も少なからずいるとか。)
(周りからは邪道扱いだが、そこそこ見る目があることをここに追記しておく。)


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嘘つき、ロンリー。