悠仁と年上の人01
「よろしくお願いしますっ!」
聞いていて気持ちの良い発声に、直角かと思えるほど綺麗な一礼。
その姿を前にして俺が何となく思い出していたのは、高校時代に友人を応援に行った野球の試合だった。
(流石にピンク色の頭をした高校球児はいなかったけどな…)
今年の母校は甲子園に行けるだろうか?
なんてぼんやり考えていたのが不味かったらしく、危うくあと一歩のところで真っ直ぐに差し出されたその手をうっかり握り返しそうになり、ハッと我に帰って慌ててその手を引っ込めた。
「ぁ、ぶね…」
思わず漏らした声にキョトンと不思議そうに顔を上げた相手は高校生くらいの少年で、イタドリユウジくんというらしい。
そう名乗られた際、俺も一応礼儀として氏名を名乗り返しているのだが、その時に即「白兎さんスね!」と下の名前で呼び返されてからずっと困惑しっ放しである。
いや、それを言うならイタドリくんから声を掛けられた時点から、だ。
なんというか、距離感が凄い。
通りすがりを捕まえて、初対面でいきなり親しげに名前呼び。
そしてトドメが「一目惚れしたから付き合って欲しい」ときた。
残念ながら思考が停止気味のため、未だに全く状況を飲み込めていない。
ただ、油断するとつい流されてしまいそうになることだけは先程のやり取りで分かったので少し用心しておこうと思う。
「あ、やべっ!」
と身構えていた矢先、突然声を上げたイタドリくんに思わずビクリと肩を震わせてしまった。
幸いそれは気付かれなかったらしく、「これから任務だった!」と慌てた様子のイタドリくん。
(任務……バイト?)
意外と苦学生なのだろうか?と再び頭がぼんやりと現実逃避をし始めた。
そう言えばこの辺りでは見たことない制服を着ているが、どこの学校だろう。
いや、そもそも制服なのか?
なんて凝視していた黒い服からスマホが取り出され、連絡先を求められた俺はイタドリくんに倣ってスマホを取り出す。
そして画面に「虎杖悠仁」と出たのを見て、なるほど、こういう字を書くのかと―…
「………あ。」
「ごめん、白兎さん!それじゃあまた今度!」
しまった、流された、と気付いた時にはもう返事も待たずに虎杖くんは駆け出していた。
が、大分離れたところでふと立ち止まったかと思えば、こちらを振り返ってブンブンと手を振っている。
遠目でも分かるその満面の笑みについつられて小さく手を振り返してしまった俺は、まさか後日改めて虎杖くんから「結婚を前提とした交際」を迫られるなんて知る由もなかった。
(……けっこん?)
彼は年下の男の子
(これがジェネレーションギャップ)
(…って済ませていいのか?本当に?)
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嘘つき、ロンリー。