甚爾と硝子の弟01
※夢主、高専時代。
※甚爾が最強コンビに負けながらも生存しているif設定で『懐玉』後の話。
家入白兎は何を考えているのか解らない。
そう陰でこそこそ、あるいは面と向かって堂々と言われることも多かったが、当の本人がそれを気にする様子はなかった。
むしろ何故か「自分ほど解りやすい人間はいない」と自負しており、周囲の言葉は冗談か何かだとさえ思っているらしい。
それこそ、周囲の人間からしてみれば冗談でしかなかったが。
『だって、姉さんはいつも俺が考えてることを言い当てるだろ?』
『そりゃまぁ、ずっとあんたの姉やってるからね。』
そんな白兎が最近、「何か」を拾って隠れてこっそり飼っていることに気付いたのも、やはり硝子一人だけ。
だが、残念ながらその「何か」については、流石の硝子も全くの予想外だった。
もしも事前に知っていれば、何となくここしばらく疲れた様子を見せていた同級生に軽い気持ちで「白兎のところに行ってみなよ」などと声を掛けることは絶対にしなかった。
「あんたが飼ってるのが犬か猫なら、少しは癒やされるんじゃないかって思ったんだけど。」
「あぁ、そういうの、アニマルセラピーって言うんだっけ?前に何かで読んだ気が」
する、と白兎が続けた瞬間、聞こえてきた轟音につられ、二人の視線がそちらへと向けられる。
その先で対峙しているのは高専生二人と、男が一人。
そして白兎は感嘆の声を上げ、硝子は溜め息を吐いた。
「アニマルセラピーじゃないけど、夏油先輩、元気になったみたいで良かったな。五条先輩もなんか楽しそうだし。」
「…代わりに倉庫が吹っ飛んだけどね。」
「あ、クロの寝床。折角見付けた場所だったのに。」
「………」
家入白兎は何を考えているのか解らない。
いや、正直「何も考えていないんじゃないか」というのが硝子の、姉としての見解だった。
でなければ大の男を、それもつい先日の星漿体の一件で五条夏油コンビが返り討ちにした『術師殺し』を拾ってこっそり飼っていた、なんてあり得ない。
「…とりあえず、あれ、夜蛾さん達が来る前に何とかしなよ。」
「俺が?」
「あんた以外誰がいんの?」
「お前以外誰がいるんだ?」
拾った責任はしっかり取れよ。
そう甚爾が笑ってようやく、それまで壁中に貼られた呪符を物珍しげに見渡していた白兎が振り返る。
そして、一つ二つゆっくり瞬きすると「姉さんと同じことを言うんだな」と目を細めてみせた。
『すごいな、あんた。』
星漿体を仕留め損ねた挙げ句、六眼持ちとはいえ学生相手に甚爾が返り討ちに遭ったのは数日前のことだ。
悔しいことに命からがら逃げ出すことしか出来ず、その逃げた先で鉢合わせたのが白兎だった。
『その状態でまだ生きてんだ?相手は五条先輩?』
『、あ……?』
『術式の練習台で良ければ、俺が手当てしてやろうか?』
『…………』
『まぁ、まだ姉さんみたいには上手くいかないんだけど。』
罠か、否か。
それを判断するには白兎の表情からは何も読み取ることが出来ず、正直今でも何を考えているのかよく解らない。
『とりあえず、何て呼ぼうか?黒猫っぽいしクロでいい?』
だから、甚爾は賭けに出ることにした。
「術後の経過は良好だから逃げたければさっさと逃げればいい、って俺言ったはずだけど。」
「あ?そうだったか?」
「まぁ、そっちがそれでいいなら別にいいけど…あぁ、そうだ。これから何て呼べばいい?」
結局賭けに勝てたのかどうか一人飲み込んだまま、甚爾は「クロでいいさ」と白兎に笑い返したのだった。
あなただけ
『術師殺し』伏黒甚爾改め禪院甚爾の秘匿死刑が決定。
ただし、今後反転術式を用いる高専生の姉弟(主に現場に赴くことの多い弟)の護衛を務めることなどを条件に執行猶予付きとする。
(なお、護衛対象である姉弟の内どちらか一方が亡くなった場合、それがいかなる事情であっても死刑は即時執行される)
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嘘つき、ロンリー。