甚爾と硝子の弟02(+夏油)


※夢主、高専時代。
※甚爾が最強コンビに負けながらも生存しているif設定で『懐玉』後の話。











「ということで、今後俺の護衛としてこの人が同行することになったんだけど。」


七海達も一緒になることがあるかもしれないから一応紹介しておく。

そう言って白兎は隣に佇むその人物を指し示してみせたが、残念ながらそれ以上説明が続くことはなかった。

紹介された当の本人も気怠げに首元を掻きながら欠伸を洩らすばかりで、一向に挨拶を始める様子はない。


そんな二人を前に「よろしくお願いします!」とあっさり素直に受け入れることが出来る灰原が、七海は少しだけ羨ましく思えた。


いや、件の人物については事前に高専内で通達があったため、白兎の「名前すらない紹介」でも別に問題ないと言えば問題はなかった。

むしろ七海が状況説明を求めているのはそちらの方ではなく、白兎の逆隣に佇む、呪詛師以上に呪詛師っぽい禍々しいオーラを発している某先輩についてだった。このまま触れずに済むなら触れたくはない、が今この場で自分が触れなければきっと誰もそこに触れることはない。

七海は諦めるしかなかった。


「それで、夏油さんは何故ここに…?」

「どこの馬の骨ともしれない輩を、可愛い後輩と二人っきりにする訳にはいかないだろう?」


出来る限り直視しないように恐る恐る投げ掛けた問いに、にっこりと返された笑顔が怖い。

そして、その返答を聞いていた『術師殺し』が鼻で嗤った瞬間、更に空気は恐ろしいことになった。


「何かおかしなことでも言いましたか?あぁ、そう言えば馬ではなく猿でしたね。失礼しました。」

「今は番犬だけどな。コイツ専用の。」

「…ペットどころか呪具みたいなものだろうに。白兎も、こんなガラクタを押し付けられるなんて本当に可哀想なことだ。」

「万年人手不足の業界だからな。まぁ護衛と称してべったり自分の残穢を擦りつけて悦ってる根暗なんかよりガラクタの方が使えるだけマシなんだろ。というわけで、ここは任せてさっさと呪霊でも何でも祓いに行ったらどうだ?特級呪術師サマ?」

「今この場でお前を祓ってやってもいいんだぞ、呪詛師風情が。」

「あ?やれるもんならやってみろや。俺が負けたのは六眼のガキだ、テメェじゃねぇぞ。」


ぴりぴり。ひやひや。どろどろ。

非術師であれば、いつ呪霊が発生してもおかしくないほど負の感情が取り巻く現状。

そして、実際にどこからともなく二体の呪霊が現れた瞬間、(だろうな…)と七海は危うく遠い目をして納得してしまうところだった。


警報が鳴らない辺り、どうやら二体とも登録されている呪霊らしいが。


「あれ?護衛さんも呪霊を使うの?」

「…確か、天与呪縛のフィジカルギフテッドだという話でしたが。」

「あぁ、クロのあれは呪霊操術じゃなくて、ただ呪霊に呪具とかを取り込ませて倉庫代わりにしてるらしい。」

「へぇ!あ、倉庫と言えば裏にあったやつがなくなってたね。撤去されたのかな?」

「さぁ?本当、どこに行ったんだろうな。」

「………」


先日一人任務に出ていて何も知らない灰原が、本当に羨ましいと思った。

そして、今後もしばらくはあの二人と共に行動することになる級友に同情し、何とも言えない眼差しを向けているとその視線に気が付いた白兎が振り返った。


「七海、どうした?なんか疲れてるっぽいな…そうだ、あれに混ぜてもらったらどうだ?元気出るぞ?」


相変わらず冗談なのか本気なのか、よく読み取れない表情で目の前の一触即発の光景を指し示された七海は「結構です」と溜め息交じりに答えたのだった。




なれたもん勝ち

(あちらが日常に成るのが先か、)
(こちらが日常として慣れるのが先か)

(…まぁ、結果は同じことですけれど。)


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嘘つき、ロンリー。