キッドととある資産家の息子01
※ヤマダくん(仮名)
それまで名前も顔も知らなかったクラスメイトのヤマダくんのお見舞いを受け、およそ一時間が経過。
大抵、学校からのプリントなどをこちらが受け取ると皆すぐに帰ってしまうのだが、今回新記録を樹立した彼はかなり社交的な方らしく、次から次へと話題が尽きることはなかった。
お手伝いさんがお客様用のお茶とお菓子を用意してくれたのも今回が初めてだった。
初対面の自分相手にこれほどなのだから、学校ではきっと中心的存在、さぞや人気者に違いない。
なんてぼんやりと考えていると、ヤマダくんは興が乗ってきたのか、今度は趣味だという手品を披露してくれた。
それはそれは見事なもので、実は本当に種も仕掛けもない、自分は魔法使いなのだとカミングアウトされてもきっと信じてしまうほど。
これは一人で見るのは勿体ない、と思わずお手伝いさんを呼び寄せ、共に惜しみない拍手を送っている間に、いつの間にかさらに一時間が経過していた。
今日は何だか時間の進みがやけに速いみたいですね、と名残惜しそうに仕事に戻っていくお手伝いさんを見送って、俺もようやく外が暗くなり始めていることに気が付いた。
そして、流石にそろそろここに引き留めておくのも悪いかと思い、礼を言ってお開きにしようとヤマダくんに向き直った瞬間。
「もう少し警戒心を持った方がいいですよ?お坊ちゃま?」
真っ白な、それこそ本当にマジシャンのような出で立ちへの早替わりに、俺は思わず目を見開いた。
その様子に満足したのか、不敵に笑うクラスメイトは先程までとはまるで別人に見える。
「いや…本当すごいな、ヤマダくん。そういうのって全部自己流?それともやっぱり誰かに師事してたりするのか?」
「……おいおい、もしかしてまだ気付いてないのか?」
「え?…あ、ごめん。俺何か見逃してた?悪いけどもう一回」
「いやいやいや、そうじゃなくって。」
「?」
一体ヤマダくんが何を言いたいのか、いまいち察することが出来ずに首を傾げていると、ヤマダくんは自身の口元に手を当てて何やら考え込み始めた。
俺では駄目なのかもしれない、ここはもう一度お手伝いさんを呼んだ方がいいだろうか?
と傍らの呼び鈴に手を伸ばし掛けたところで、それを遮るようにヤマダくんが口を開いた。
「なぁ、三日前に予告状が来ただろう?」
「よこくじょう?三日前…あぁ、父さんが何かそんな話してたな…怪盗がどうとか…でも別宅のことだし、こっちにはあんまり関係ないからって詳しくは聞いてないんだけど。」
「………」
「もしかして、その話が聞きたかった?だったら俺よりお手伝いさんの方が詳しいはずだから、今呼んで」
「いや、いい。大丈夫。問題ない。」
「そうか?」
確かその怪盗も凄い奇術を使い、世間でも有名でお手伝いさんもファンだと言っていたような気がする。
ヤマダくんもそのファンで、その衣装を模して俺を驚かせようとしてくれたのだろうか。
色々と楽しませてもらった手前、ここで俺も話に乗るべきかもしれない。
「…もしかして、ヤマダくんがあの怪盗キッドなのか?」
ヤマダくんの反応を窺いつつ恐る恐る問い返せば、一瞬複雑そうな顔をしてみせたものの、調子を取り戻したらしいヤマダくんは「だとしたら、どうしましょうか?お坊ちゃま?」とまた笑った。
舞台裏の閉幕
(そうだな…じゃあとりあえずお手伝いさんを呼んで、記念写真を撮ろうか?)
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こっそり名探偵祭より。
企画へのご参加ありがとうございました!
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嘘つき、ロンリー。