神ではなく君に誓うよ
「翡葉さん、少し痩せた?」
「そうですか?自分じゃよく分からないですね」
「うん。なんか、痩せたというより……やつれたように見える」
「……」
「最近ちゃんと寝てる?食事は?」
「毎日六時間以上は寝てますし、一日三食食べてますよ。平気です」
「……って言われてもねぇ。霊圧ガッタガタだよ」
「……」
「何か悩みでもあるの?……誰かに、陰湿な嫌がらせされたりしてる?」
「いえ、別に。もしそうなら輪堂先生に言う前に自分で成敗してますよ」
「そう?……じゃあ、恋煩いとか?」
「煩うような恋はしてません」
「『煩うほど進展がない』って意味?」
「失礼にもほどがある」
「えー?」
「……煩う余地も、資格も。私には無いんです」
「どうして?」
――どうして。
私が、裏切り者で部外者だから。
たったそれだけのこと。
「愛する人の為なら、いくらでも自分を犠牲に出来る」
「!」
「それが恋の本質だからでしょうね」
だから私には、出来ないんだ。
――バタン!
「……っ、」
ニコリと笑ってそういえば、輪堂先生は驚いて目を丸めていた。その隙に彼の元から立ち去り、気が付けばあっという間に自分の部屋。扉に背を預けてズルズルとその場にへたり込んだ。カタカタと震える手で、もがき苦しむように浅い呼吸を繰り返す胸元をギュッと握りしめる。
“ちょっと待って下さい!誰がそんな事を……”
“……藍染副隊長ですか……?”
“それは全部彼のした事だ!”
“ボク達は平子サン達を助ける為にそこに向かったんス!”
「――できない、よ……っ」
愛する人の為なら、いくらでも自分を犠牲に出来るのに。心も体も、命も。なんだって差し出せるのに。私が犠牲にしようとしてるのは、自分ではなく彼の“心”なのだ。彼が傷つくのを黙って見過ごして、信頼を裏切って――それでも命を守るためだからと、彼の心を犠牲にして自分勝手な愛を貫き通すなんて。
……そんなの、私には出来ないよ。
(裏切らなければ命が守れないというのなら、)
(どうして私はこの世界に来たのだろう)
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