2020/10/15
先週
母方の祖母が亡くなりました。
朝母から着信があって、朝や真夜中の連絡はなにかあったとしか思えなくて通話ボタンを押したら、前日の夜に亡くなったと。
わたしのお裁縫の先生です。
ばあちゃんは、とても手先が器用で、何でもできて、すごい人です。お裁縫やお筝や生け花がとても上手で、よく真似して遊んでいました。おしゃれもお化粧も上手で、祖母宅に行くといつも素敵な装いで迎えてくれました。わたしが苦手な編み物を、ゆっくり教えてくれました。糸と針の扱い方、仕舞い方、布目の見方、たくさん教わりました。
わたしのピアノの発表会でのこと。
音楽教室を卒業する最後の発表会、プログラムのいちばん後ろがわたしでした。最後だし悔いがないように弾きたいと緊張していたら、掌や指先がすこぶる冷たくなっていて。それに気付いたばあちゃんが、10月末で寒かったこともあり持っていたホッカイロを握らせてくれて、両手を包んで撫でてくれました。いつもは両親だけ観賞に来る発表会も、最後だからと祖父母が来てくれたんです。頑張った姿を見せられて、あのときは本当にうれしかった。
いくつか、遺品を受け継ぎました。
ばあちゃんは本当におしゃれで拘りのある人なので、身の回りのものはとにかく美しいんです。大事にします。これでもかってほど大事にします。
あとひ孫を抱いてもらえたこと、これほど嬉しいことはないです。結婚式にも来てくれて、出産後の病院にも来てくれた。大好きな大好きな、やさしいばあちゃんです。
ごめんなさい、どこかで心の内を露呈したくてこの場を選んでしまいました。また元気にサイト整理に勤しみます。
2020/10/02
『オレンジと朝日』
酒井と同僚さんのお話
*****
夏より穏やかな朝日。空気が澄んで清々しい秋晴れの空。
(うっ、目にしみる)
玄関の掃除中、降り注ぐ太陽の眩しさに背を向け目を瞑る。こんなに心地が良い日ならいつもは笑顔で伸びをして気合いを入れるのだけれど、今日はその光が辛い。瞼の裏まで刺激される。
「おい」
「てっ!」
目を開けたらまだ眩しかった。おかしい。自分は太陽と逆向きのはずだ。
「酒井」
「突っ立ってんなよ、手が止まってる」
ファイルを片手に小言を言う男。同僚だ。
「叩いたわね」
「このままだと開店に間に合わないだろうからな」
「ファイルで叩く理由になってない」
東堂商会、朝の日課は社員の店舗掃除。日毎に担当箇所を変えながら受け持つ。今日は自分が玄関の担当だった。
「寝不足か」
「なんでわかんの」
「目元のコンシーラーが昨日より濃い」
「は?!」
目ざとい。というかいつわかったんだ。出勤してから顔を合わせた時間は僅かだぞ。
「貸せ」
「なに」
「箒。ドア拭きも済んでないとみた」
目を細めて口角を上げる酒井。いやこの男は元より目が細い。
「朝から楽しいことでもあった?」
「別に?」
「だって目が笑ってる」
「気のせいじゃないか?オレがまわりに何て言われてるか知ってるだろ」
「それは運転してるときだけでしょ」
「さてね」
ファイルを店内に戻し、箒を奪って陽の下に出た酒井。
(ああ、そうか)
さっき眩しかったのは、オレンジ色のせいか。
*****
酒井にバインダーで叩かれたいというフォロワーさんのツイートを拝借して。
酒井、あれ…、酒井初めて書いたぞこれ。