夢駆け作者、ばれていることを知る
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ミドリ、起きなさい。そんな言葉にミドリは緩やかに目を見開いた。
そこにいるのは同僚である。時計は昼休みが終わる時間の五分前を指していた。あぁ、なんだ、夢か。ミドリはそう思いながら起こしてくれた同僚にお礼を告げた。なんだやっぱり、全部ただの夢だったのだ。もう少し夢の続きを見ていたかったような気もする。ミドリはもう一度目を伏せてみたが、眠気は一向に襲ってこなかった。
ミドリは休憩室も兼ねたロッカー室の扉をあげて、そのまま階段を上る。不意に背後からミドリ、と呼びかけられた言葉に振り返れる。しかしそこには誰もいない。先を歩く同僚が「ミドリ?」と不思議そうに彼女の名前を呼んだ。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもな――」
――ミドリ!!
ひと際おおきな声が聞こえた時だ。がくん、と、ミドリはバランスを崩す。階段につまずいたミドリは前向きに倒れていく。衝撃に備えてミドリは目をぎゅっと伏せた。
しかしながらいつになっても襲ってこない衝撃にミドリは恐る恐る目を開く。
視界の先に広がったのは職場の無機質な階段ではなく、ふかふかのベッドだった。となりですやすやと眠っているのはリョータだろうか。
「あー、やっとおきた! もー、ねちゃだめって言ったのに」
ムッとしながらハルはミドリをみる。まるで小さな子供がぽこぽこと怒っている姿に似ている。それをぼんやりしてみていれば、ハルがむぎゅっとミドリの頬をつねった。
「痛い……なんだ、あっちが夢か。いや、でも、うん?」
「夢見てる暇はないんだからねー! ミドリは狙われてるっていう自覚持って」
「そんな馬鹿な」
ミドリは苦笑いしながらゆっくりと起き上がる。頭がぼんやりする。
「私みたいなのを狙って何になるの?」
「あのねぇ、ミドリ、実は戸籍も国籍もないでしょ」
ハルの言葉にミドリは固まる。それはケイマしか知らないことのはずである。ケイマが漏らしたのか。ミドリは目をパチリと瞬く。その言葉を聞いて、隣で眠っていたリョウタは飛び起きた。
「えっ、ミドリちゃん国籍も何にもないの? どういうこと?」
「真っ先に寝たふりしてたリョータは黙っててー!」
ハルの言葉に、リョータは「いや俺も寝てたんだけど」となんとも言えない顔をした。ハルはそれを無視して口を開く。
「あのねぇ、ミドリ、国籍も何にもないってことはねぇ、何しても証明されないけれど、何されても証明できないんだよ」
ずいっとハルはミドリに顔を近づける。
「分解されて臓器を売られても、行方不明になっても、わかんないんだからね!」
「あぁ……なるほど、被害がわかんないからか……」
「危機感がない!」
ハルはそう言ってミドリの頬をもう一度引っ張った。ミドリは半分寝ているのがされるがままである。
「表情豊かだなぁ」とミドリがぼやけば、いい加減にしなさいとハルが怒って見せたが。
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