04



 あれから、一週間は経っただろうか。此処での生活に慣れたとは言えないものの、大体の生活リズムが掴めたことから自分の中で起床と就寝の時間は固定されてきていた。

 そろそろお昼かな。
 先程から情けなく唸るお腹を右手で擦りながらそんなことを考える。
 此処での生活でまず困ったのは、時計がレイナさんの家にしかないということだった。当然、そうなると外出している時は時間が全く分からない訳だが、どうやらレイナさんは太陽の向きと勘で分かるらしい。長年の勘とか、そういった類いのものなんだろうか。なんにしても凄いと思う。

 この間なんか12時ぴったりで、お昼食べられたし。

 私は腕に抱えた袋がずるずるとずり落ちそうになるのをなんとか抱え直す。すると、ずっしりと重い袋の口が中から出ようとするガラス瓶に押し開かれて中から一瓶空中に転がり出ると、たちまち辺りに硬質な音が響いた。足元の瓶の破片が冷たい石の上でカランと涼しげに鳴く。

 やらかした。洞窟内の空気は寒い筈なのに、私の額には汗が浮かび上がっていた。

 前を歩いていたレイナさんが此方振り向けば、涼しげな目を見開いて踵を返す。

「怪我はないかい?」
そう訊かれた私は驚いて一拍遅れた返事を返した。 私が無傷なのを確認すればレイナさんは持っていた袋を地面に置いて、ポケットから小さな紙袋を取り出した。

「すいません。ぼーっとしちゃって……」
私がそう口にして、 足元の破片に手を伸ばした時だ。

「気を付けな。あんたが運んでいるのは商品だよ。商品にうっかりなんて通用しないんだ。」

その声はこの一週間聞いたレイナさんのどの声よりも冷たく感じて、私はその通りだと思いながらも、目尻に涙が溜まるのが分かった。俯いた自分自身の頭を妙に重く感じながら、私が口を開き欠けた時だ。ふわり、と何か温かいものが頭の上に降りてきた感触がして、思わず顔を上げる。

「おや、泣いてるのかい。目付きが悪い癖に意外と泣き虫なんだね。」

 レイナさんの優しく慰めるような声が耳に触れて、私はここで始めて自分が頭を撫でられていることに気がついた。しかし、目付きが悪いとは失礼な。私が鼻水を啜りながら、見た目と中身は違いますと涙混じりに言えば、目の前のレイナさんが短く溜息を吐いたと思えば、ふっ、と口許を緩める。

「冗談だよ。」
さぁ、さっさとこれ片付けて洞窟抜けるよ。その呼び掛けに私の顔がまた地面に向いた。しかし、私の視線の先には暗い洞窟の石ではなく、外からの光りに反射してきらきらと輝いているガラスの破片があった。私はその光りに手を伸ばしながら、今日も頑張ろうと心の中で自分自身に呼び掛ける。









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